法律から見た再生可能エネルギーの今

バレンタインデーのチョコは苦かった。経済産業省は672件の太陽光発電の設備認定(42円)を取り消すと発表

ベーカー&マッケンジー法律事務所
弁護士 江口直明
【2014年3月11日】

2. 対応策

2.1 行政訴訟

  外資系の設備認定者の中には、経済産業省のだまし討ちは許せない、行政訴訟で徹底的に争うという姿勢を見せている事業者もある。しかし、行政訴訟で設備認定者が勝つのは困難と思われる。これらの事業者の言い分は、法律が遡って適用され不利益を受けたという主張である。確かに2012年7月1日に再生可能エネルギーの固定買取制度が始まった際には、資源エネルギー庁の固定買取制度のホームページで、いつまでに太陽光発電所の建設を始めなければならないという制約はないという回答が出されていた。

  欧州では、発電を開始した時の値段で買取価格が決まるため、事業者はスピード感をもって建設に当たらなければならなかったのに対して、日本は設備認定の申請を増やして、導入を促進するため、欧州よりも買取値段の決定時期を前倒しした。設備認定を取得し、系統への接続の申し込みを電力会社に受領してもらえれば、その時点で買取価格を固定して、以後同じ価格で20年間買い取ってもらえるという促進策を取った。

  設備認定を取る際の資料として、土地権利者の証明書を添付することを2013年12月10日から求めたが、法的拘束力のある土地売買契約書や土地賃貸借契約書、さらに法的拘束力のあるパネルの発注契約書を添付しなくても、設備認定が取得できるという取扱いがなされた。再エネ法第6条及び同法施行規則第8条によると、設備認定の要件は「発電設備を設置する場所及び当該設備の仕様が決定していること」とされている。上記取り扱いは、法的拘束力のある土地と設備に関する書類を提出しなくても設備認定は取れるという慣行を作ったことは確かであろう。

しかし、エネ庁のホームページでは、売電開始時期は問わないという回答は出されていたものの、土地と設備について法的拘束力のある書類を出さなくても、法律の要件を満たしているという回答は出されていない。逆に「当該場所における事業の実施可能性が相当程度見込まれ、用いる発電設備の製造事業者及び型式番号等が確定していること」を求めていた。ただ、法的拘束力のある土地と設備の契約書を出さなくても設備認定は取れていた、すなわち、経済産業省が法の要件を緩く解釈して、設備認定を出していたというだけである。

  設備認定の有効性は最終的には裁判所で判断されるが、法律の要件を厳格に解釈すれば、もともと、法的拘束力のある契約書がないのに、「決定していること」というのは無理があろう。今までの経済産業省の取扱は、法の設備認定要件を緩く解釈して、促進策として、とりあえず設備認定を認めたものにすぎず、この緩い解釈で経済産業省から設備認定を受けたからと言って、法の要求する「決定してること」とういお墨付きが得られたものではない。法の条文を無視していいということにはならない。いわば今回の経済産業省の措置は、法律の条文通りに解釈をし、事業者に土地及び設備について拘束力のある契約をすみやかに取るように促すものであろう。設備認定から1年近く経つのであるから、未だに土地も設備も「決定して」いなければもはや、促進的特例をだまし討ちとして行政訴訟を提起しても、裁判所に認めてもらえる可能性は低いといわざるを得ない。

2.2 契約書の作成

  取り消しを免れるためには、急いで拘束力のある契約書を作成することである。聴聞の手続きを待つ必要はなく、拘束力のある契約書を作成次第、所轄の経済産業局に提出するべきである。

  資源エネルギー庁に電話照会したところ、土地と設備の両方の要件とも不充足との事務連絡を受領した発電事業者が、事後的に片方の要件を充足した場合には、その旨を根拠書類とともに経済産業局に報告すべきであり、経済産業局がその旨を認めた場合には、もう片方の要件を2014年8月31日までに充足するよう求める事務連絡が改めて送付されるとのことである。

  まだ、具体的に決まっていないので契約は作れないではないかという疑問をお持ちの方もいると思われる。決まっていないことは契約の解除条件として規定すればよい。例えば、林地開発許可や農地転用許可がまだ取得できていない場合には、とりあえず土地の売買契約又は土地の地上権設定契約/賃貸借契約を結び、売買代金や地上権設定の権利金の支払いはこれらの許可がとれたことを条件にしておき、またこれらの許可が取れなかった場合には、これらの契約は解除されるとすればよい。また、資金調達に関する契約がまだ締結できていなければ、資金調達に関する契約が締結できなければ、これらの契約は解除されると規定すればよい。とにかく取り消しを回避するためには契約締結を急ぐことが必要である。

  但し、この解除条件方式については、事業者の意思にかかわらず契約が解除になる場合があることを前提としているので、法的拘束力のある契約と言えるかという疑問は残り、エネ庁もこの点は明確に回答をしていない。

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