日本とドイツのFIT制度

第2回どう違う日本とドイツのFIT制度~知られていない差と役割

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表
株式会社日本再生エネリンク 代表取締役
北村和也(きたむらかずや)
【2014年1月20日】

  年が明けました。
  今年は、日本の再生可能エネルギー、特に太陽光発電に関してはある意味で波乱の年になるでしょう。買取り価格の値下げや大量の42円の買取り権利の行方など大きな動きが続きます。ただし、あまり心配し過ぎることはありません。まだまだ成長は続きます。もったいぶるわけではありませんが、このあたりは次回以降のテーマとします。
  さて、今回は本コラムのメインタイトルでも掲げた日本とドイツのFIT制度の違いです。ドイツの制度を真似た日本ですが、中身は案外違うところがたくさんあります。ドイツのFIT制度を批判しているマスコミも多いのですが、制度をきちんと勉強せずに書いているケースが多いのです。
  知っておけば、日本の制度の問題点や将来の課題などが見えてきます。「学ぶ」と言うほど難しくありませんから、さらっと読んでみてください。

日独のFIT制度の成り立ちと基礎知識

  FITとは、フィードインタリフの略です。細かい説明はあまり重要ではないので省きます。再生可能エネルギーからの電力を通常より高く買い取ることによって、再生エネの普及を図る仕組みです。一般の火力発電などの電力原価は10円程度で、太陽光はその3倍以上のコストです。このままでは競争力が無いので、法律で高く(現在は税抜きで1kWh当たり36円)買い取ることを義務付けるわけです。これを電力会社は通常と同じ価格で消費者に売るので逆ザヤとなってそのままでは赤字です。その差額を賦課金として電力料金に上乗せして消費者から回収する仕組みです。よく勘違いする人がいますが、このやり取りには税金は投入されません。あくまでも電力を発電する側と消費する側のやり取りです。
  この制度は、再生可能エネルギーを普及するために大変有効だと考えられ、世界の数十か国で導入されています。
  その最先端がドイツで、正式には2000年に導入され、その後3回の変更を経て現在はおととしの1月から施行されている4つ目になります。名称は、再生可能エネルギー法(EEG:Erneuerbare Energien Gesetz)で、ドイツではEEG(エーエーゲ-)と呼ばれています。 日本では、ご存知のようにおととしの7月1日からいわゆる「固定価格買取制度」と言う名で施行されています。
  二つの制度は、単純に言って12年近い実績の差があります。また、大型の水力を除いた再生可能電力の全電力に占める割合は、日本がわずか1.6%なのに対して、ドイツではすでに20%を越えています。
  2000年あたりでは、日本の太陽光の発電能力は世界一でしたから、FIT制度の導入でドイツは見る見るうちに再生エネの割合を伸ばすことができました。

目標の設定が大きな違い

  ドイツのEEGは中身の多い法律です。よく、太陽光や風力などの買取り価格が日本とどう違うか聞かれますが、実は簡単には答えられません。日本の買取り価格は、A4一枚の表で収まるものです。発電施設の大きさによるカテゴリー分けも、例えば、風力発電なら20kW未満と以上など2つしかありません。一番多いバイオマスでも、原料別に5つあるだけです。
  一方ドイツでは、施設規模別はもちろん原料に関しても細かい規定があります。多くが基本の買取り価格に様々な要素がボーナスとして加わり、だんだん高くなる仕組みです。例えば、バイオマスなら生活ごみを加えると+○セントなど複雑で、単純にいくらとは言えないのです。
  さらに、おととしからは、月毎に買取り価格が下がるシステムも導入されたので、どんどん変化を続けています。

  何より、大きいのが目標の設定です。
  日本の買取り制度では、再生エネ電力を何年までに何%の割合にするかという目標がありません。民主党政権の時に、2030年までのエネルギーミックスの目標を大騒ぎして議論(議論をすることは本当に良いことなのですが)しましたが、法律には何も書きこんでいません。原発を横目でにらむ中、数字を決められないという背景もあります。
  一方、ドイツのEEGでは、法律の冒頭に「○○年までに○○%」とはっきり書かれています。ちなみに、現状ではドイツは、2020年時点で全電力の35%、2050年には80%が目標です。あるドイツの政府関係の研究機関では、再生エネ100%も可能であるというリポートを出しています。
  目標があるとないとでは、その政策も全く違ってきますし、そもそも目標無しにどうやって電力の買取り価格を決めるのだろうかと不思議ではありませんか。

優先買い取りと優先接続

  最近、メガソーラーが計画されても、系統連系が出来ずに実現しないケースが増えているのを聞いたことがあると思います。
  再生エネ普及の大きな制度的なバックアップは、高い買取り価格の設定だけではありません。再生エネ電力を必ず買い取ったり、系統につなぐことを保証したりする必要があります。これを「優先買い取り、優先接続」といいます。日本の法律でも、そのような条項はあるのですが徹底されていません。電力会社が拒否できる例外が書かれていて、読みようによっては恣意的な拒否が可能だと言えます。
  ドイツの場合は、よほどのことが無い限り、系統も電力会社が用意しなければなりません。ただ、日常的な過剰発電(風が吹きすぎて風力発電が過大になるなど)に関しては、停電の危険が起きるため、再生エネの伸びとともに最近では接続拒否が起きています。
  これは、再生エネが20%を越えるドイツのケースです。これを持って来て、わずか2%に満たない日本での危機のように騙る一部マスコミや評論家がいますので気を付けてください。

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