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第3回再生エネの『ひと工夫』が面白い~プロジェクト成功のキーポイント

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表
株式会社日本再生エネリンク 代表取締役
北村和也(きたむらかずや)
【2014年2月25日】

再生エネ条例の衝撃と利点

  そんな中、前述の理由を裏付けるような衝撃のニュースが続きました。
  まず、大分県の由布市の市議会がメガソーラーを規制する条例を、1月末に全会一致で可決しました。そして、2月29日にさっそく施行されています。内容は、5000㎡以上の施設を造る発電業者に対して、届け出を義務づけるとともに、市が「景観を損なう」と判断した場合には、計画の見直しを指導したり勧告したりできることになりました。

  さらに、1月14日には、長野県の飯島町で自然エネルギー条例が成立と同時に施行されました。条例では、はっきりと、「町内の自然エネルギーは町民が優先的に活用する権利がある」とうたわれています。

  こういった傾向は、各地でさらに続くと思われます。これは単なる規制ではありません。前述したように再生エネの持つ性格、つまり、地元が保有する固有のエネルギーという特性を考えれば、その特性に戻って行くという当然の帰結かもしれません。
  この結果、特に難しいファイナンス(事業資金の調達)などいくつかの課題がクリアできれば、地域中心のプロジェクトが次々に立ち上がり、実際に地域活性化につながっていくことが期待されます。

『ひと工夫』でダブル、トリプルの効果

  最後にもうひとつ例を見ましょう。
  福島県の南会津町で、新しい試みが進んでいます。
  事業の主役は地元の温泉ホテルで、エネルギーの主役は熱です。このホテルは、まず木質バイオマスのボイラー(2基:合計出力1MW)を導入する計画を立てました。木質のチップをボイラーで燃焼させて、ホテルの暖房、給湯、温泉の加熱に使います。この結果、燃料代はこれまでの重油に比べて半減します。
  ここからが、更なる工夫です。ボイラーで発生した熱の一部は小型のバイナリー発電機に送られます。
  バイナリー発電とは、これまでは発電が出来なかった比較的低い温度で電力も生み出すシステムです。高い熱であれば水を水蒸気に替えてタービンを回して発電できます。バイナリー発電では、蒸発する温度が水より低い媒体を使います。最近は、温泉発電でよく使われているので耳にしたことがあるかもしれません。
  さて、このケースでは、使いにくい低温を発電に回し、電気はホテル内で使用できることになります。この結果、熱の無駄の無いカスケード利用(滝のように多段階で利用すること)が成立します。
  もうひとつあります。ボイラーの燃料となる木質チップは、地元の森林組合などが共同で供給をする仕組みです。地元の林業の活性化も加えれば、トリプルの効果が得られることになります。
  なかなかよくできています。『ひと工夫』の好例です。

『ひと工夫』が、今年のキーワード

  太陽光発電への優遇措置が取り払われ始めて、再生エネ事業がかなり甘やかされてきた時期は終わりとなります。だからといって、まだまだ事業の可能性はたくさんあります。これまでがバブルに近かったというだけです。
  これからは、新しい事業コンセプトを加え、柔軟に対応できるプロジェクトが、実を結んでいくことになります。

  その際の重要なポイントはやはり地元への貢献だと思われます。すでに書いたように、地域に対する配慮を欠いた事業は、地元にそっぽを向かれてしまう でしょう。逆に、本当に地元に利益をもたらす事業ならば、遠く離れた場所からの参加者でも歓迎される可能性が十分あります。ここに焦点を当てた『ひと工夫』がプロジェクト成立の鍵になります。

  そして、もうひとつどうしても付け加えておきたいのが、忘れがちな熱の利用です。最後の温泉ホテルの例のように、捨てられる熱を利用することもあれば、太陽熱やヒートポンプのようにストレートな熱利用もあります。今年は、熱の『ひと工夫』も重要になります。

  『ひと工夫』をキーワードに書き進めてきました。
  しかし、何事も右から左へ簡単に行く訳ではないことは言うまでもありません。よく市民ファンドをやりたいという声を聞きますが、実現させるにはいくつものハードルがあります。また、新電力も再生エネの発電施設がまだまだ少なくて、殺到する需要に対応しきれていません。それぞれ、これからが正念場です。
  今年は、再生エネにとって、新しい試みの年になります。太陽光一辺倒だった昨年までとは違った状況が展開するでしょう。そこでは、地元の住民の方々や自治体による『ひと工夫』が必要になってきます。いろいろな力を結集しながら、ちょっと知恵を働かせたプロジェクトを各地で実現して欲しいと思います。私も微力ながら、ぜひお手伝いさせてもらえればと願っています。

以上

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