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第3回再生エネの『ひと工夫』が面白い~プロジェクト成功のキーポイント

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表
株式会社日本再生エネリンク 代表取締役
北村和也(きたむらかずや)
【2014年2月25日】

  少し前のテレビの深夜バラエティ番組で、ある食べ物に"ちょい足し"を試すことが流行りました。例えば、「みそラーメンに苺ジャムをちょっと足すと意外においしい」などというものです。(私がいま作った例なので、決してマネをしないように)
  年明けからのエネルギー関連のニュースに目を向けると、実は、新しい再生エネのあり方が垣間見えてきます。
  これまで日本での再生エネ普及の先陣を切ってきたのは、見渡す限りパネルが輝くメガソーラーや風車が何本も立ち並ぶウインドファームなどでした。ところが、今年になって、単純な単体の再生エネ発電事業に、様々な工夫がプラスアルファされたケースが散見されてきました。
  これが冒頭に挙げた"ちょい足し"の再生エネバージョン、タイトルのように『ひと工夫』を加えた新しいスタイルです。
  今回は、この再生エネの『ひと工夫』についてお届けします。

相次ぐ市民参加という『ひと工夫』

  まず目についたのが、こんなケースです。
  京都府の京丹後市で、小中学校の屋根貸しによる太陽光発電を行う事業者の募集が行われました。ここまでは、最近よく各地で進められている自治体の屋根貸しのひとつのようです。ところが、当たり前ではないところがあります。事業を行うための資金を一般に公開し、市民からの出資を含める場合は、小中学校の屋根の賃料が無償になるというのです。事業の利益が市民に直接還元されるならば、屋根代はただでよいというユニークなシステムです。市は、具体的な地元への利益還元を事業者に求めたのです。
  一方、小田原市では1月下旬にこちらも市民参加型のメガソーラーの計画が発表されました。
  事業の基本的な仕組みはこうです。事業の主体は、かまぼこ屋さんや干物屋さんなど小田原市内の企業38社が共同で設立した発電事業会社です。さらに、事業資金は、地元の金融機関からの融資に加え、市民からの出資も募って、メガソーラーを建設、運営する形を取ります。
  こちらの例では、地元企業の共同出資と市民ファンドという2つの『ひと工夫』が入り、たいへん面白い取り組みになりました。
  市民ファンドの組成に携わった方から聞いた話ですが、市民ファンドに出資をすると、出資した人の名前を焼き入れたかまぼこ板が発電事業会社内のかまぼこ屋さんからプレゼントされるといいます。もちろん、出資に対して2%程度の分配金もあります。名前入りのかまぼこ板は、楽しいおまけという訳です。

電力売買の『ひと工夫』で生まれる利益

  こんなケースもあります。
  神奈川県が、2014年度から県の施設104か所で使用する電力の調達先として、これまでの東京電力を止め、いわゆる新電力の4社に替えることを決めました。この切り替えだけで年間の電気料金を2億7000万円も削減できるといいます。これで県の施設の全体の8割近くが新電力からの電力を受けることになります。
  ここで、説明を少し。
  新電力とは、PPS(特定規模電力事業者)とも呼ばれ、これまで東京電力など各地域の電力会社に独占されていた電力供給を新たに行うことのできる新しい電力会社のことです。多くの新電力が、既存の電力会社より、少し安い価格で電力を供給しています。
  これまで多くの自治体や企業が地元の巨大電力会社だけに電力の供給を頼ってきました。しかし、電力の自由化に伴う新電力の登場で、新たな選択肢が生まれ、電気料金の節約ができることになりました。電力の調達先を選ぶという『ひと工夫』自治体に利益をもたらすのです。

  新電力は、電力を供給するだけではありません。再生エネなどの発電施設から電力を買い取る役割も果たすのです。実際には、新電力は多くのケースで、既存の大きな電力会社より少し高く電力を買い取ります(この仕組みの理解は少しややこしいので、別の機会に譲ります)。このため、例えば、再生エネの発電事業者は発電した電力を、既存の電力会社ではなく、新電力に売却するという『ひと工夫』で利益を増やすことができるのです。
  後者のケース、新電力への電力売却は、日本各地で少しずつですが広がってきています。まだ、この仕組みを知らない既存の発電事業者さんやこれから発電を行おうとしている事業者さんもいらっしゃるようです。ぜひ教えてあげてください。

『ひと工夫』がなぜ広がってきたのか

  なぜ、各地でこんなひと工夫が行われるようになってきたのでしょうか。
  理由は大きく2つあると考えます。
  ひとつは、特に太陽光発電に対する優遇措置が打ち切られることが背景にあります。買い取り価格が毎年下がり、来年度いっぱいで屋根置きの補助金や一括償却も打ち切りになります。そこで、再生エネの普及のためには、事業を行うモチベーションとして新しい魅力が必要になってきているのです。

  私が本命だと考えるのは、もうひとつの理由です。
  太陽光や風力、小水力など再生可能エネルギーの資源は、地元の固有の資源で、地域のものだという考えが広まってきています。このため、自らの資源を自ら地元で利用し、その利益を地域へ還元しようという動きが強くなってきていると考えられます。
  市民ファンドを組み込めば屋根の賃料をゼロにするという京丹後市の『ひと工夫』は、その最たる例です。
  これまで、自治体自身がメガソーラーの用地を用意して、誘致を行った例も多く見られました。しかし、結局、地元にたいしたメリットが無いまま、利益は遠く離れた大都市からやってきた事業者に持っていかれてしまうことが多いのが実態でした。くすぶる地元の不満の声を私もずいぶん聞いてきました。
  ですから、事業の立ち上げの時点から、地元に利益が落ちる仕組み、地域活性化のシステムを組み込むことを考えるように変わってきたのでしょう。

  これは、今後、再生エネの発電事業を進めようとする方々にとっては大変重要です。これからは、地元とどうやって一緒にやって行けるか、地域にどう貢献できるかが、プロジェクト成立のベースになるからです。

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