日本とドイツのFIT制度

第4回
市民に利益をもたらす再生エネ
~ドイツの成功プロジェクトの現場から

日本再生可能エネルギー総合研究所 代表
株式会社日本再生エネリンク 代表取締役
北村和也(きたむらかずや)
【2014年4月23日】

再生エネのブームを北部の町に見に行く

エネルギー協同組合とは何だろう

 今、ドイツで「エネルギー協同組合」という組織が急激に増えています。8年前には100に満たなかったこの組合は、現在800に迫ると言われています。その最も有力な理由は、再生エネ事業に対して市民自らが民主的に参加したいという希望の受け皿になっているからだと考えられています。すでにドイツ全国で8万人が参加し、総出資額は12億円近くにまで増えているのです。

 協同組合は、個人の市民だけでなく自治体や金融などの参加も認められています。それぞれが出資した出資金を使って、発電や熱利用のプラントを建設し、自ら運営管理するというのが基本です。

写真:町の家

[町の家]

写真:配管工事

[配管工事]

木質バイオマスの熱利用を進める町

 私たちが訪れたのは、ドイツ北部の都市ハノーファーまで車で1時間程度、人口わずか1500人の小さな町ヴィッテジンゲンです。ちょうど、エネルギー協同組合が暖房用の温水を供給する配管を設置中というベストタイミングでした。

 協同組合が、今、進めている事業は、町の暖房をこれまでの化石燃料から木質バイオマス(ペレット)などを使ったシステムに転換することです。これを基本的に住民が主力となってやり遂げようとしています。それを支える仕組みが、エネルギー協同組合ということです。

写真:プラント

[プラント]

新しい暖房システム

 町のはずれに真新しいプラントが建っていました。これがシステムの基本となる木質ペレットの大型ボイラーと温水供給設備です。左手の細めの塔が木質ペレットの貯蔵タワーで右の太目の塔が温水の貯蔵槽です。建屋内部には、3つのペレットボイラーとコントロールルームがありました。屋根には24kWeの太陽光パネルが載っています。ボイラーのトータル熱供給能力は1.64MWth(注:ドイツでは熱もワットで表示します)あります。

 暖房全体システムとしては、これに別の民間企業が持つバイオガスのコジェネ、さらには天然ガスのCHPなども組み合わせて、厳寒時のピーク暖房や不意の故障などに対応することになっています。

※CHP( Combined Heat and Power = コージェネレーション)
 発電と熱供給を同時に行うシステムのこと。燃料は、天然ガス、石油、LPガスなどで、エンジン、タービン、燃料電池などを使って発電し、同時に発生する廃熱を回収する。この廃熱は蒸気や温水という形態で供給され、冷暖房や給湯などに使われる。

組合員の出資とリターン

 町の有志が、新しいシステムの提案を始めたのが4年前でした。2010年の年明けすぐに住民への説明会を開いて、新しい暖房システムのメリットを訴えました。熱い気持ちは町民に伝わり、その年の9月にはエネルギー協同組合が設立され、外部のエンジニアリング会社ともタッグを組みながら、設備の設計、建設と進んでいきました。

 組合員の負担は次のようなものです。まず、組合への出資が参加する一家庭あたり500ユーロ、そして、設備の建設などに対しての出資が3500ユーロの合計4000ユーロ(60万円弱)となります。組合員は現時点で197家庭、これらの資金を元におよそ8億円のプラントと工事などをねん出しています。おおよその費用の内訳はこうなっています。プラントなど総投資額はおよそ8億円、組合の出資金の合計が1億円強なのでもちろん全然足りません。残りは、州と国からの補助金が2億円弱、金融からの借り入れが5億円強で帳尻を合わせています。

 メリットは、一点集中で、暖房費の削減。通常、石油で1kWh当たり10数ユーロセントなのが8.5ユーロセントと半額近くになります。寒いドイツではこれは大変ありがたいことなのです。もちろん、CO2の削減にもなります。出資金への配当は無く、システムの効率化や組合員の増加による余剰はすべて暖房費の低減に結び付けるというやり方です。ちなみに、温水の配管の設置は毎週数軒ずつとゆっくり。大きな建設会社に頼めばあっという間だが、地元の設置業者を使ってのんびり地元にお金を落としていくことが重要だといいます。配管の完成は今年の夏の予定です。

写真:左から、エンジニアリング会社社員、ヘスル議長、監査役、技術担当組合員

[左から、エンジニアリング会社社員、 
 ヘスル議長、監査役、技術担当組合員]

モットーは、「エネルギーを自らの手に」

 私たち視察の相手は、組合の議長のヘスルさんなどの組合の主要メンバーの面々。みんな本当に子どものように目を輝かせて、自らの取り組みとその成果を語ってくれました。ここまで案内をしてくれたエンジニアリング会社の方も、このプロジェクトが好きで好きでたまらないといった様子なのが印象に残りました。彼らの最大のモチベーションは、「エネルギーを自らの手で作り出すこと」です。ドイツのFIT制度や協同組合などの仕組みと地元の人たちの情熱が、それを目の前で実現させています。

 どうですか。どちらもエネルギーをツールにして、事業を住民自らが動かしています。そして、肝心なのは、実際にその利益を住民自らが手にしていることです。

 日本でもFITの仕組みが出来ました。ドイツの例は決してよその国の遠い夢物語ではありません。

以上

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