情熱レポ VOL.02 屋根借り 太陽光発電プロジェクト レポート

資源が枯渇しないクリーンエネルギーである太陽光や風力などを利用した再生可能エネルギーは、2012年7月に施行された固定価格買取制度(FIT)を契機に急激に普及しました。中でも太陽光発電事業については、小容量を多拠点にといったシステムよりも、大規模メガソーラーの方が、システム単価を下げられ、IRRの観点でみて投資効率が高いため、事業投資の観点では1か所あたりの規模の大きな発電事業の方が優先される傾向にありました。

2013年3月、三菱UFJリース様、レオパレス21様、そしてオムロンは「屋根借り太陽光発電プロジェクト」を発表しました。これは、レオパレス21様の賃貸物件(約3.5万棟)のうち、太陽光発電に適した条件を満たす物件の「屋根」を選定・賃貸した上で、太陽光パネルを設置する。そしてその事業の運用のために、3社がそれぞれ出資し、約20kW×1,100ヶ所を束ねる、売電事業のためのSPC(特定目的会社)を設立したのです。

情熱レポVOL.2では、このプロジェクトを立ち上げた三菱UFJリース様にお話をうかがいながら、一緒に推進したオムロンFEの談も交えて、このプロジェクト発起から推進にいたるまでの、プロセス・その背景、そして知られざる苦労話に迫ります。

実現の可能性は低いと考えていたプロジェクト

「当時の臨場感を思い出して、ちょっと感動しました。あの無理な納期で供給をお願いしていたのがこの工場だったんだと。」と、三菱UFJリース株式会社の星田眞希課長がオムロンのパワコン工場であるオムロン阿蘇(熊本県)に足を運んだ際に語りました。このプロジェクトの話が持ち上がってから、リリースまで約半年。短時間でやり遂げなければならない課題が山積みで、その中でも特に大きな課題のひとつにこのパワコンの生産・納品がありました。成し遂げたのは今にして思えば、至難の業、どころか「奇跡」だったと星田課長は当時を振り返ります。

「レオパレス21様から、弊社に資金調達も含めた太陽光事業に関するご相談が持ち込まれました。これがこのプロジェクトの最初のきっかけでした。」

これをきっかけに、オムロンFEに話を持ち込んだとおっしゃる星田課長。

「新しい取組みであり、多拠点に設置する話になることもあって、自社単独でやるには難しいのではないか、という懸念の中、SPCを活用するカタチであればやれるかもしれないな、という方向性は即座に決まりました。」

図:クリックで拡大します

SPCとは「Special Purpose Company」の略で「特別目的会社」のことを言います。その名のとおり「特別の目的」のために機能する会社のことですが、このプロジェクトでは太陽光発電事業を行い「売電収入を担保に証券化して投資家から資金を調達すること」を「特別の目的」として機能する会社です。

この太陽光発電事業を行うSPCを設立することにより、太陽光発電設備導入にかかる投資リスクを複数の事業者で分担する事ができるのです。具体的には、各事業者がSPCと匿名組合契約を締結し、出資金を拠出します。出資者は出資割合に応じて収益の分配を受けます。屋根のオーナーは売電事業者であるSPCと屋根の賃貸借契約を結びます。そしてSPCが発電事業を行い、その収入の一部が賃貸料として屋根オーナーに支払われます。そして、このSPCスキーム活用の場合、SPCが設備維持管理、発電事業の運営を行うので、屋根オーナーには事業運営上のリスクが発生しないメリットがあります。

「以前から、三菱UFJリース様とは何か一緒にできないですかね、というお話をしていたんです。いろいろな議論をしていました。勉強会や情報交換も含めて意見交換をしながら『今、実はこんなことを考えているんですけど』みたいなね。ただなかなか具体化するに至るものが、見いだせなくて。」

星田課長とともに何名かのチームでこのプロジェクトを推進してきた主メンバーの一人であるオムロンFEの今井部長は言う。

星田:このプロジェクトは弊社だけでは絶対にできない為、まず社内の関係部署で、このプロジェクトのカタチを考えました。そのとき、パートナーの位置づけとして私の頭に浮かんだのは御社。御社しかない、ということで、このプロジェクトを持ち込ませて頂きました。

今井:正直言って、ありがたかったですね。それで、もう「すぐに検討しろ!」となって、僕とあと数名がこれをやろうということになりました。

星田:当初はお互い、というか、多分関係者みんながそうだったと思いますが、本当に99%実現すると思っていなかったんです。たぶん御社もそうだったと思いますが、あまりにハードルが高すぎて。正直言うと、実現の可能性は本当に低いと思っていました。

では、そこまで難しく、そこまで不可能と考えた案件をなぜ実現することができたのでしょうか。

奇跡は役割を全うする突破力と行動力を持った3社が出会えたこと

この発電事業スキームには3社それぞれに役割があり、屋根のオーナー様への太陽光発電モジュール設置の提案から設置工事まで顧客対応全般を担うのがレオパレス21様、三菱UFJリース様は太陽光発電事業に必要な設備のリースとSPC設立・運営を担い、オムロンFEはパワコンの供給および太陽光発電設備の運用と保守(O&M)および発電量等のモニタリングを行います。

「スキームをつくり始めたのが2012年の10月ごろで、プロジェクトのリリースが2013年3月ですから、期間は半年。それはもうすごいスピード感でした。せめて1年あれば全然違ったと思いますが、プロジェクトのリリースまでの期限があったため、苦労しました。そういう意味で苦労したのは、今回の全く新しい取組みに対する検討・調整のための時間が無かった、というところですね。」とは星田課長。

この発電事業スキームの重要な要素のひとつには買取価格42円/kWがあり、その権利獲得をクリアしなければならず、そして同時に屋根のオーナーさまの承諾を得なければいけない。その承諾をどの書面をもって、どうすれば承諾とみなすのか、各社内でのリーガルはどうなっているか、などなど、やらなければいけない課題が山積みの毎日だった、と星田課長は振り返る。

星田:当社ではSPCを利用した取引は数多く手掛けていたので、SPC設立にそれほど不安はありませんでした。ただ、オムロンFE様は初めてでいらっしゃって、本当に一日に何度も(SPCについて)訊いてこられて、苦労されていたな、と。

今井:会社の中で決裁をもらおうと思ったら、私たち自身が会社に対してもきちんと説明をしきらないといけない。それには、私たちが理解しないと説明できないということでまずはそこからのスタートでした。まず理解する。そして次に、人にきちんと説明できるだけの根拠を並べる。そこを(星田課長には)常にサポートしていただきました。『SPCへの出資』に関して、もちろん初めてだということで、私たちとしてはそこをきちんと経験したいと考えて、敢えてそこに踏み込んだわけです。

星田:SPCという器をつくる以上、初期費用もかかります。一定規模の事業量が見込めないと事業スタートできないというのが大前提でした。「事業ボリューム」を常に頭の中に置いて、これを下回ってしまったらできないという判断を下さなければいけない。

今井:そのボリューム感については、レオパレス21様が力強く明言してくださった。

星田:そうですね。様々な不確定要素があるなか、事業スタートできるのか、というのが、すごく議論になりましたね。

本件プロジェクトに関してはその推進上、何をするにしても力仕事であることに変わりはない。ただ、その苦労を乗り越えて実現できたのは、この3社それぞれの役割の利害が一致したこと、と星田課長は言います。今井部長も同じくそれぞれの強みが掛け合わさることで実現できたと考えていました。

星田:あれから1年半たって、ここまで小口分散した屋根借り発電事業は出てきてないのではないかと思うんです。私もあの後同じようなお話をいろいろといただきますが、これほど各社の強みを活かせ、役割分担がはっきりしていて、お互いの利害が一致していて、かつ、そこを全うする突破力と行動力を持った会社が出会えたことは奇跡的だな、と。

今井:3社がそれぞれの得意なところを掛け合わせた初めての取組みが、今回の1100強の物件でした。その1100棟以上のオーナー様を、きっちり取りまとめてくださったのは、レオパレス21様だからで、オーナー様との普段のコミュニケーションの関係を持っておられたからこそ、この短期間で全部やり切れた。まさにさっきの突破力、実行力です。

星田:そのとおりですね。

今井:また、SPCを設立して運営するところ、20年間のリスクをきちんと担保して事業として成り立つように仕上げていくところはまさに三菱UFJリース様の強みですし、その全国の1100以上の拠点での発電を、同じ均質のサービスできちっと20年間サポートし続けられるところが、私どもの強みであるという。まさにこの事業は3社の強みの掛けあわせでしかできなかったんです。

星田:取組み当初は、他の取組みの雛形にできればいいな、くらいに思っていたんです。例えば、この3社のどこかが入れ替わっても、同じようにできるのではないかと考えていたのです。でも、それはかなり難しいということを今は実感しています。時間が経つほど実感していますね。

今井:だから振り返ってみて、よく出来たね、って言う感じですね。

星田:まさに奇跡的という感じはします。

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