施工主様情報
施設名 | 山一電機株式会社 |
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設立 | 昭和31年(1956年) |
本社所在地 | 東京都 |
事業内容 | 検査⽤バーンインソケット、コネクタ、実装⽤ICソケット、フレキシブル配線板、光薄膜フィルタ等の製造および販売 |
ホームページ | http://www.yamaichi.co.jp |
施工内容
施工場所 | 佐倉事業所(千葉県佐倉市) |
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施工内容 | ■太陽光発電システム[容量:680kW] ■NAS電池[定格出⼒:400kW、定格容量:2,400kWh]■EMSコントローラー |
施工期間 | 約4ヶ⽉(2020年6⽉- 9⽉) |
⼭⼀電機株式会社様(以下、⼭⼀電機)は、「⼈の尊重」、「企業価値の最⼤化」、「企業品質の向上」、「技術⽴社への挑戦」および「社会的役割の達成」という経営理念を掲げられ、お客様への満⾜の提供を⽬標に信頼できる優れた品質の製品づくりを⾏うメーカーです。2019年9⽉に千葉県を襲った⼤型の台⾵による予期せぬ停電は⼭⼀電機を初めて事業停⽌に追い込みました。その経験を活かし、⾮常時の電源確保策を主とするBCP対策を⽬的に⾏った、太陽光発電システムとNAS電池の導⼊について、計画から施⼯に関わられた取締役生産本部長の⼟屋様、⽣産本部⻑代理の村⽥様、総務⼈事グループプロフェッショナルの宮内様にお話を伺いました。
佐倉事業所について
− 今回の設備を導⼊された、この佐倉事業所とは、どのような役割を担う事業所なのでしょうか?
当社は半導体⽤のICソケット、コネクターなどを主⼒製品としており、この佐倉事業所ではそれらに使われる部品の⽣産、⾦属のプレス、合成樹脂の射出成形、プレス加⼯した⾦属部品の電気めっき、⾦型の設計・製作、さらに樹脂及び⾦属の切削による部品の加⼯、といったようなことをメインで⾏っております。製品の組み⽴ては90%以上を海外で⾏っており、そちらに部品を供給するというかたちになっています。部品の調達も含めて、海外の⼯場に向けての⽣産管理、品質管理、⽣産技術、こういった機能がすべてここにあります。当社にとっては事業の中⼼となる機能を有する、グループ全体で⽣産系のベースとなる事業所です。
導入までの背景 / 課題
− きっかけは去年の台⾵でのご経験だと伺っています。その時の状況と、今回の導⼊をご検討された経緯を少し詳しく教えてください。
去年の9⽉の台⾵15号です。日曜日の夜から月曜日の朝に強⾵と⼤⾬に⾒舞われて、⽉曜の朝にこの地域が停電しました。千葉ではかなりの地域が停電し、ここは⽔曜⽇の18時ごろ復旧しました。停電は約三⽇間でした。⼀番⼤きな影響は、⽣産⾃体が⽌まったことです。組み⽴てのほうに部品を供給できなくなってしまい、製品が造れなくなってしまいます。システムにも影響します。そこでこういう時のために⾃社での発電を検討しなければいけないと⾔うことになり、いろいろなことを確認して検討した次第です。
− そういった備えについて、過去にもご検討されていたのでしょうか?
電力の確保ということについては具体的に検討したことはありませんでした。過去の最も長い停電は3.11の時です。その時は一日程、金曜日の午後から土曜日の午前中にかけての停電でした。工場自体は制震構造になっていて、地震に対する対処はしていたのですが、電気に対してはここ何十年、停電事故はなかったので考えていなかったというのが実際のところです。
− 今回の停電によってすぐにご検討を進められたのですね。
はい、翌週にはBCP対策を指示しました。
当初は非常用発電機を導入することを検討していました。非常用発電機というと軽油重油を使ったディーゼル発電機が一般的ですが、いろいろと調査すると、有事の際に稼働できなかったり燃料の調達が確実にできるのかなど、不安要素が結構あることが判りました。そんな時に、当社と金属材料で深いお付き合いのある日本ガイシさんで、NAS電池を造られていることを思い出し、電池の担当の方からの詳細な説明を受け、電池と太陽光の組合せも含め検討するよう指示しました。
− 電池にたどり着くまでに相当スピーディーにいろいろとご検討を重ねられたということですね。
そうですね、3日間も停電したということもあり、その翌週には経営層からBCP対策の指示を受けました。先ほど、土屋も申し上げましたが、非常用発電機の検討から始まり、それが不経済で発電しないリスクも伴うとなったので、次にガスを検討しました。当社は、この工場を建てた時に導入したエアコンにガスエンジンのヒートポンプを使っていて、構内に地震に強い中圧管を引き入れてあります。それで、ガスのレシプロ若しくはタービンでの発電を検討しました。ガスですと日常に発電し電力の使用が可能ですが、発生する熱の活用ができない当社の場合、買電と比較し非常に燃料コストが掛かる事が判り、向かないと判断しました。そこで土屋よりNAS電池の検討をするよう指示を受け、NAS電池+太陽光発電という組合せで12月から検討に入りました。
− 最終的にNAS電池を使った対応を選ばれたのは、お話しいただいたご検討の中で出現した課題を全部クリアできたということなのでしょうか?
⾮常⽤発電機は東⽇本⼤震災の時に実際に動かなかったという事例が4割程度あったときいています。ということは、普段から動かしていないものですから、⾮常の時だけ使うとなると、100%信頼できるというわけにはいかないと。そうであれば、普段から⽇常使いができること、つまり太陽光発電と電池をうまく活⽤しながら⽇常で使っていればその実⼒もわかります。ですから有事の際に⾮常にうまく使えるのではないか、とも考えたわけです。
− 太陽光発電システムを導⼊するスペースもあった、と。
そうです。駐車場が非常に広くソーラーパネルを設置する場所が十分にあるというのも一つの理由です。OFEからパネル屋根置きの提案もあり、我々もそれができればと屋根も含めて検討しましたが、この建物自体が改築という特殊な経緯で建築されている事、また2014年の大雪以降に屋根耐荷重の建築基準が大きく変わったこともあり、断念しました。
− もともと経営層からの指⽰もあったということですが、BCP対策だけでこれだけの⼤きな投資というのは、投資対効果と⾔う⾯を考慮しても、なかなかすぐには経営層の合意を得られないケースが多いと思うのですが、今回はどのように経営層を説得されたのですか?
当社は「お客様が満足いただける製品・サービスを提供できる会社」を中期経営計画に掲げています。それを実現するための投資ということで、説得という感じではありませんでした。ただ今回の太陽光発電+NAS電池の組合せでBCPの対応が可能かについては、しっかりと検討するよう指示を受けました。そこで、有事の際の必要電力の把握、太陽光発電+NAS電池の運用方法の検討、そして発電量の予測などを基にシミュレーションを繰り返し、有事に十分対応可能である事を確信し、ご説明し承認を頂きました。発電量の予測に関してはOFEに大変ご協力いただきました。
− 導⼊して今、経営者様のご感想、どのように思われているのかをお聞きになった事はありますか。
ほぼ計画通りに施工が終わり高評価を頂いています。実際に停電事故が起きてBCPとしての運用をしている訳ではありませんので、それについての評価は未だですが、日々の発電量、電力費への影響については興味を持っていただいています、定期的に報告もしています。また、新たに平時も含めベストな運転方法を確立する様、指示を受けました。
システムの設計・施⼯・効果について
− 次に施⼯に関してお尋ねします。今回の導⼊についてOFEにご相談をされた理由や経緯を教えてください。
OFEとは2016年に補助⾦を活⽤しての空調更新でお付き合いが始まりました。その後もGHPチラーをEHPチラーにするということで、空調関係の⼯事を2度お願いした実績がありました。それを踏まえてOFEに声をかけさせていただきました。今期も空調更新の話があったんですが、停電に遭ってディーゼルの発電機の段階でも声をかけさせていただいて、その後の検討で太陽光発電のほうが良さそうだ、ということになって改めてお願いしたというのが経緯です。当初はリチウム電池の活⽤もご提案いただいていたのですが、どちらがいいのかといろいろ検討した結果、NAS電池の⽅が優位性がありそうだという判断があって、NAS電池とソーラーパネルの組み合わせでの導⼊をOFEにお願いすることにしました。
− もともと過去に数回のお付き合いがあってのご相談ということだったんですね。
実は3社に太陽光と蓄電池のお⾒積もりをお願いしていました。ただNAS電池というのが当社でもビジネスで⾮常に深いつきあいのある⽇本ガイシさんが造っていらっしゃるということで、⽇本ガイシさんのNAS電池との組み合わせはできますか?ということを打診をしましたところ、OFEからはすぐに「できます」というお話をいただきましたので、その後はこのNAS電池と太陽光発電の組み合わせについてはOFEだけとの話にさせていただきました。以前にも補助⾦のことやいろいろなことでOFEにはご尽⼒をいただいておりましたので無理難題をお願いしてもやってくださるのではないかと思って、しかもすぐに回答をいただけたので、⽐較対象はOFEのNASとリチウム、あと他社2社さんでリチウム、と4つの中からひとつを選択するということになりました。
− NAS電池をOFEの施⼯で導⼊すると決められ、2020年6⽉から9⽉の4ヶ⽉程度の施⼯期間だったと聞いております。施⼯中、パートナーとしてのOFEにはどのようにお感じになりましたでしょうか?ご満⾜いただけたのかどうか、また、何かお気づきになった点等があればお聞かせください。
施⼯管理の⽅が2名常駐していただき、⾮常にきめ細かくフォローしてくださっていました。天候にも⽐較的恵まれたこともありまして、⽇程的にも⾮常に順調に進みましたし、⼤変満⾜しております。施⼯中は⾮常に暑い⽇が続きましたので、施⼯にあたるみなさんのお体の⾯が⼼配でした。それでもうまく継続的に、休みなくスムーズに⾏っていただけたことは⾮常にありがたかったですね。特に当社の社長から、次の台風が来る前にということを強く言われていましたから、台⾵は来ないで来ないで、来ないうちに終わってくれ、と願っていました。OFEの努⼒の甲斐あって台⾵が来ることなく無事に⼯事が終わって良かったです。
− 台⾵は来ないに越したことはないですが、今は来ても⼤丈夫ですね。
そうですね。あと地元の⼯事会社を使って施⼯を⾏っていただいたこともすごくありがたかったです。値段が合えばお願いしたかったんです。
− 地域の会社さんと⼀緒に施⼯されたということですね。地域のことは地域の会社でやっていきたいと。
そうですね。この佐倉市で、当社ももうすでに30年以上仕事させていただいていますので、少しでも地元に恩返しできればと。
− それはすばらしいことですね。では施⼯についてはご不満などはあまりなく完了できた、と。
基本的に不満はなかったですよ。本当に。よくやっていただいたと思っています。
今後の展望・取り組みについて
− 今回、BCP対策ということで、この⼤掛かりな設備を導⼊され、今後はその運⽤を含め、それ以外にも、省エネ対策や環境貢献ですとか、今後どういったことをお考えになっているのかお聞かせいただけますか。
この事業所を開設して丸19年たったところなんですが、空調関係に限らず、設備の⽼朽化というのが課題としてありまして、その中でも空調の更新は急務だと考えています。そういう中で、過去にもOFEには空調の更新をしていただいていますので、これからもいろいろとご協⼒をお願いしたいと思っていますし、それ以外にも省エネ対策につながるようなご提案をいただければ、と思っています。できるだけ自然エネルギーというものを使って自社の生産を賄えるようになったので、いかにこれをうまく運用していけるのかが我々の今後の課題なのです。また、どれだけ環境に貢献していけるか、できるだけ自然エネルギーを使ってものを作れるか、ということはこれからの企業のいちばん必要なことではないかと思っています。化⽯燃料は使わない。CO2を極⼒出さないということですね。この佐倉事業所は全社の7割ぐらいのエネルギーを使⽤していますので、ここが改善されれば全社としてそういう⽅向に向かいます。はじめはBCP対策という観点からいろいろな対策を検討して導⼊を決めましたが、それだけではなくESG、SDGsにもつながるというところだと思っています。会社の⽅針としてもESGは社会に対してやっていかなければいけないと思っています。
− 経営理念に企業価値の最⼤化を掲げられていらっしゃいましたし、そういうところを真摯に考えられて、この佐倉事業所が中⼼となって今後もやっていかれるということですね。
メーカーですから、メーカーとしての物づくりをできる限り⾃然エネルギーを使って⾏うことは、⾮常に有意義なことだと思っています。
[2020.12.9]
ご要望事項の実現
山一電機様からBCPの相談があったのは、2019年9月の停電被害を受けられた直後でした。その後、コロナの影響でリモートも活用しながら何度も仕様決めの打ち合わせにご協力をいただきました。本システムは、BCP目的だけではなく日常の活用においてエネルギーの最適化の実現が可能となります。今後、より良いシステムになるよう運用方法についても提案させていただきます。
オムロン フィールドエンジニアリング株式会社
エネルギーマネジメント事業本部 EMエンジニアリングSE部 EMエンジSE1課
西畑 真