【2024年最新】日本の太陽光発電導入状況について徹底解説!
導入事例やメリット・デメリットも紹介
世界から見た太陽光発電における日本の現状。電力需給はどうなる?太陽光発電は本当に必要か?
INDEX
太陽光発電には向き不向きがある?日本は?
日本の太陽光発電の現状を知りたい、または導入をご検討されている企業様に、日本における太陽光発電の現状と、これから太陽光発電がどうなっていくのか、予測や期待されている点を解説してまいります。
日本の電力自給の現状は?
そもそも太陽光発電について語る前に、エネルギーにおいて日本が世界と比較してどのような体質であるのかをご説明しておきましょう。
まずひとつめに、日本は電力自給率が大変低い国です。エネルギー資源に乏しく、発電するための石油や石炭、天然ガスのほとんどを輸入に頼っています。2019年度の日本のエネルギー自給率は12.1%。OECD諸国36か国中35位と、他の先進国と比べても非常に低い水準と言えます。
もうひとつ、日本は島国であるために電力の融通がききません。ヨーロッパをはじめとした陸続きの国々では、電線を張り巡らせて国家間で電力を売買することが可能です。電気が足りない時には隣国から購入し、余ったら売る、そんな電気のやりとりができると、電力は安定し、天候に左右される再生可能エネルギーへの移行もスムーズにいきます。ところが日本は島国であるために、そもそも隣国と電線でつながることができません。電力のもととなる化石燃料を海外から輸入して生産しているため供給の見通しがきかず、再生可能エネルギーへの移行も国内電力の安定供給を守りながら行わなくてはならないため、大変時間がかかるのです。
ここまでご説明すると、日本がエネルギーに対して非常に弱い国であるという印象を受けられるかもしれません。ただ日本はエネルギーの「利用効率」においては世界でも大変優れた成績を収めています。日本の実質GDP当たりのエネルギー消費は、インド、中国の5分の1から4分の1程度の少なさであり、省エネルギーが進んでいる欧州の主要国と比較しても遜色ない水準です。現在の我が国のエネルギー利用効率が高いことが分かります。
日本は温室効果ガスの排出量では中国・アメリカ・インド・ロシアに次ぐ世界5位の排出国でもあります。
今後日本は得意のエネルギー効率や技術開発を武器に、さらに再生可能エネルギーを取り入れて脱炭素社会に向かうことが期待されています。
<参考リンク>
「日本のエネルギー2021年度版」 安定供給(資源エネルギー庁)
<参考リンク>
※「エネルギー白書2021」(資源エネルギー庁)
日本の太陽光発電の割合は?
世界的にみても温室効果ガスの排出量が多く、それでいてエネルギー資源のほとんどを輸入の化石燃料に頼っている日本。そんな日本が世界の求める「脱炭素社会」のハードルをクリアするのは大変難しい話だと言わざるを得ません。
2020年度の電源構成は、石炭31.0%(3,102億kWh)、LNG39.0%(3,899億kWh)、石油等6.4%(636億kWh)、水力7.8%(784億kWh)、新エネ等12.0%(1,199億kWh)、原子力3.9%(388億kWh)となりました(※下部の資料参照/第214-1-6)。LNGや石炭・石油のシェアは低下していますが、未だ約76%を化石燃料に頼る現状です。東日本大震災の経験から原子力発電も依然低い水準に留まっている日本。再生可能エネルギーや水力発電に対する期待は急速に高まっています。
再生可能エネルギーの中でも太陽光発電は急速に導入が増えた発電方法です。この背景には、2012年からスタートしたFIT制度があります。FIT制度とは、発電した電気を電力会社が一定価格で一定期間買い取ることを国が約束する制度です。この制度によって、2021年までの約10年間に、太陽光発電の設備容量は約12倍にも膨れ上がりました。
<参考リンク>
「エネルギー白書2022」(資源エネルギー庁)
日本と世界の太陽光発電導入状況について
日本の太陽光発電普及率
太陽光発電の導入容量実績では日本はアメリカに次ぐ世界第3位(2021年)にランクインしており、全世界導入量の約11%のシェアを占めています。さらに、国土面積当たりの太陽光設備容量でみると主要国の中で最大。2位は再生可能エネルギーが大変発達している環境先進国ドイツですが、平地面積当たりの太陽光設備容量で見ると、そのドイツの2倍もの設備容量を誇ります。日本は太陽光発電の導入に対して、世界的にみても大変積極的な姿勢であるということが言えます。
前段でもお伝えした通り、この背景にはFIT制度がありますが、それ以外にも日本が太陽光発電に大きな期待を寄せる理由があります。
まず、他の再エネ発電は今後の開発が限定的だということです。実は1950年代、日本はエネルギー供給の半分以上、多い時では70%以上を水力発電によって賄えるほどの水力発電大国でした。しかしその後の高度経済成長期に火力発電への切り替えが推進され、建設できる場所が少ないこともあってダム建設は縮小傾向となりました。その後日本の火力発電は増加の一途を辿っています。石油ショックなどを経て化石燃料への依存を脱却すべく原子力発電の導入が進められた時期もありましたが、東日本大震災の経験から、再度化石燃料への依存は増加しています。日本の火力発電技術は大変高く、発電効率に関しては世界トップクラスの技術を持っていますが、脱炭素を進めるという点においては、やはり太陽光発電以外にない、そんな決意にも似た期待が寄せられているのが、現在の日本における太陽光発電の立ち位置です。
他にも地熱発電、風力発電、バイオマス発電など新しい発電方法の研究が進められてはいますが、現状最も安定的に、なおかつ企業や家庭レベルでも採用しやすい発電方法が太陽光発電なのです。
<参考リンク>
「国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案」 (資源エネルギー庁)
世界の太陽光発電普及率
日本以外の国々では、中国が大変精力的に太陽光発電の導入に乗り出しています。中国は温室効果ガスの大型排出国であり、大気汚染物質であるPM2.5による健康被害も深刻です。中国は得意の低コスト化で太陽光発電システムを大量生産し、国家事業として太陽光発電を推し進めました。
これに比較してカナダは現在でも電力供給の約6割を水力発電で賄えるほどの水力資源があり、石油や天然ガス、石炭やウランなども豊富に産出するため国内のエネルギーすべてを賄っても余りあるほど電力の豊富な国です。
このような自然資源の豊富な国であれば、電力の供給は幸運にも容易であり、太陽光発電に頼らなくとも電力が供給できます。しかし逆に言うと、このような資源に恵まれていない国々の場合、太陽光発電はなくてはならない技術だとも言えます。
国民の強い意志によって太陽光発電を導入してきたのがドイツです。ドイツは2011年、東日本大震災で起こった東京電力福島第一原子力発電所の事故を受けて、全ての原発を廃止するための法律を議会で可決させました。もともとドイツは緑の党という環境政党が大きな影響力を持っていましたが、その勢力が東日本大震災の事故を受けて急速に脱原発へと動いた格好です。ドイツは1986年のチェルノブイリの原発事故でも土壌汚染などの被害を受けていますから、原発への不信感が高かったという背景もあります。これら歴史的な背景もあって、ドイツ国民は脱原発・脱炭素への取り組みを非常に好意的に支えてきました。エネルギー転換政策への支持は9割以上。その結果、ヨーロッパでも随一と言える環境先進国が誕生したのです。
上記以外の国々でも今後、太陽光発電は世界急速に成長する再生可能エネルギーであると言われています。2022年12月6日、IEAは報告書で、「再生可能エネルギーは2025年初めには石炭を抜いて世界最大の電源になる」との見通しを示しました。これには世界的な脱炭素への取り組みに加えて、ロシアのウクライナ侵攻など、化石燃料調達の不安定化が懸念されたことが背景にあると考えられます。今後ますます注目を集めていく太陽光発電。その技術開発と電力の利用効率化には、太陽光発電導入先進国である日本の知識と経験が活かされていくことでしょう。
太陽光発電国別ランキング
太陽光発電の導入国別ランキングを見てみましょう。トップは中国です。中国の優れた点は、太陽光発電の技術開発よりもむしろ、大量生産システムの確立に軸を置くことによって汎用性を飛躍的に高めた点にあります。
さらに中国は日本と同じようなFIT制度を導入し、導入した一般家庭や企業に経済的なメリットが生まれるように国家事業として推進しました。
このような大規模な政策がトップシェアの背景にあると言えるでしょう。
2位はアメリカです。アメリカはバイデン政権下で2035年までに電力部門の脱炭素化を宣言しており、そのための重要なポイントとして太陽光発電の構成比が40%まで上がる可能性を指摘しました。アメリカは他にも主な再生可能エネルギーとして洋上風力発電にも力を入れていますが、太陽光発電に関してもとても積極的な姿勢です。アメリカでも特にカリフォルニア州やアリゾナ州などの西海岸エリアでは山火事が多く発生しており、この原因として送電線が挙げられていることから、山火事の危険から地域を守るという意味でも、太陽光発電や蓄電池の普及が進められています。
日本は第3位と健闘しており、この理由については前段でも述べたところですが、4位以降は温室効果ガスの大型排出国であるインドや、環境先進国であるヨーロッパ各国が並びます。太陽光発電の導入ランキングトップ諸国の背景には、それぞれの国が各国の事情と戦いながら導入を進めている様子が見うけられます。
太陽光発電導入の事例紹介
太陽光発電導入事例①:株式会社村田製作所 様
村田製作所様は自社の駐車場に、日本最大級のカーポート型ソーラーパネルを導入されました。このソーラーパネルは社員の車を直射日光や風雨から守ると同時に発電を行うという一石二鳥の機能を有しており、なおかつ発電効率を高めるために、日光が地面に当たって跳ね返る反射光までも利用するという、細部にまでコスト効率にこだわった設計となりました。
太陽光発電導入事例②:山一電機株式会社 様
大きな台風による事業停止という苦い経験を活かされ、非常時の電源確保を主軸に太陽光発電に大きく舵を切られた山一電機様。コストと安定供給の面で検討を重ねられた結果、太陽光発電とNAS電池のご採用に至りました。
有事への備えという意味で導入をご検討された太陽光発電でしたが、導入の結果、省エネや環境貢献、ESG、SDGsにもつながったというお言葉をいただきました。
太陽光発電導入事例③:株式会社三福様 様
自動車業界全体で取り組んでいる厳しい安全対策や環境対策。そして原価低減という使命を抱き、常日頃からアンテナをはっていらっしゃった三福様。工場の遮熱塗装をする計画の中で、屋根にソーラーパネルを載せれば遮熱効果もあるとの提案を受け、導入をご決断されました。導入の結果、グループ全体で掲げる「生産活動の排出物ミニマム化」に貢献し、地域貢献にも役立つとしてお喜びの声を頂きました。
産業用太陽光発電導入のメリットとデメリットについて
太陽光発電は主に住宅用太陽光発電と産業用太陽光発電に分けられています。主に企業が導入する産業用太陽光発電では、導入費用やメンテナンス費用がかかることや、土地が必要であることなどデメリットもありますが、企業評価への貢献やリスクマネジメントにもつながるなど、デメリットを上回るメリットがあることも確かです。詳しくはこちらの記事で、産業用太陽光発電についてのメリットとデメリットを詳しく解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ
日本が脱炭素社会を実現するシナリオにおいて、太陽光発電は重要なカギを握っています。それは脱炭素社会を実現するだけでなく、日本の電力自給率をあげ、他国に頼らないエネルギー供給を実現するためにも必要です。企業や国民のひとりひとりがエネルギー政策について真剣に考え、未来のために取り組んでいくこと。
その意志と行動力が日本の明日を切り開いていくことでしょう。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
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