蓄電システムとは?
導入によるメリットやデメリット、おすすめの設置方法まで徹底解説!
蓄電システムとは?しくみや検討すべき点をわかりやすく解説!
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蓄電システムとは
蓄電システムとは何か?
脱炭素や省エネに関連する話題でよく出てくる「蓄電システム」。簡単にいうと、電気を蓄えた後に必要に応じて利用できるしくみのことですが、実際どのようなメリットやデメリットがあり、どのように設置すべきかまでご存じの方は多くないかもしれません。今回はそんな蓄電システムについて、詳しくご説明してまいります。
蓄電システムの仕組みは?
蓄電システムにはさまざまな種類がありますが、基本的な仕組みを解説します。蓄電池は私たちの身近にある「電池」と基本的な構造は同じです。
ごく簡単に説明すると、マイナス極の金属が電解液と化学反応を起こすことで電子を放出します。電子が導線などを通りプラス極の金属へと辿り着きます。このようにして、電子が次々にマイナス極からプラス極に流れていきます。この流れの中で電子を取り出すことで電力として活用することができます。
一次電池(乾電池など)は、マイナス極からプラス極への一方通行で終わってしまうためマイナス極側の化学反応が終了すると電子の流れも止まってしまいますが、電子の流れを逆向きに走らせ、充電できるのが蓄電池(二次電池/充電池ともいう)です。外部電源(太陽光発電など)から電子を受け取ることで、マイナス極側もプラス極側も放電前の状態に復元されていきます。そのため充電完了後は再び電池として使うことができるのです。
蓄電システムのメリット・デメリットとは
蓄電システムのメリット①:深夜電力を活用できるので電気代削減につながる
電気代は、使う人が多い日中は高単価、使う人が少ない深夜帯は低単価に設定されています。深夜の安い電気を蓄電池で蓄え、日中に使うことで低コストの電力を効率よく使用することができます。
蓄電システムのメリット②:災害時、停電時などの非常時に電気を使用できる
災害時や停電時に電力がストップするような時でも蓄電した電力を使うことができます。蓄電池のエネルギー源を太陽光発電などにしておけば天候が安定している限りは電力の確保が可能です。このようなメリットから東日本大震災以降、蓄電システムはリスクマネジメント面でも非常に高い注目を集めるようになりました。
蓄電システムのメリット③:太陽光発電で作った電気を貯められる
太陽光発電は非常に環境にやさしいエネルギーですが、天候に左右される性質もあるため、安定して供給するためには蓄電しておくことが大切です。
作った電気を買い取ってもらえる制度もありますが、買取価格が下がっているため、自家消費のほうがメリットが大きいと言われています。国際情勢などにより電力資源の確保が不安定な現在では、電力会社から電気を購入するよりも、太陽光発電で作った電力を蓄電し、安定供給につなげることがコスト面でもリスクマネジメントの面でも大切だと判断される場合もあります。そのためには太陽光発電だけではなく、蓄電システムが必要不可欠です。
蓄電システムのメリット④:電気自動車と連携ができる
太陽光発電などで蓄電した電力を、電気自動車(EV)に充電すればそのまま自動車のエネルギーとして使用することができます。ガソリンも必要ありませんし二酸化炭素も排出しない、とても環境にやさしい自動車です。
太陽光発電+蓄電池+電気自動車(EV)をまとめたシステムのことを「トライブリッド」と呼びます。トライブリッドを構成せずにEV充電する場合、電力の変換などが必要になりロスが発生することがありますが、トライブリッドにすることでロスをカットして効率よく電気を使用することができます。
蓄電システムのデメリット①:初期費用がかかる
蓄電システムや太陽光発電は導入コストや設置コストがかかります。設備が大型なため、導入ハードルがどうしても高くなってしまうのが蓄電システムの最大のデメリットです。
しかし解決の道はあります。国は早急な脱炭素を政策として進めていますので補助金が支給されることもあります。設備コストも一昔前に比べれば安くなってきました。例えばカーポートを設置する際にカーポートを架台として上に太陽光パネルを設置したり、工場に遮熱塗装をする代わりに太陽光発電設備によって遮熱効果を得ながら発電するなど、発電以外の価値をプラスアルファすることで全体費用を抑える方法もあります。設置にはいろいろなプランがありますので、ぜひご検討ください。
蓄電システムのデメリット②:蓄電池には寿命がある
当然のことではありますが、蓄電池にも寿命があります。一定期間ごとにメンテナンスや交換が必要です。同じ機種の蓄電システムでも、使用環境や設置場所によっては劣化が早まる可能性もあります。太陽光発電と蓄電システムの使用はリスクマネジメントの面でも注目されていますが、導入費用とともにメンテナンスコストも計算に入れながらプランを立てることが大切です。
蓄電システムのデメリット③:蓄電できる量に限界がある
蓄電システムは貯められる量が決まっています。いくら晴天の日が続いたとしても、蓄電池の限界量を超えての蓄電はできません。蓄電容量が不足する場合には容量の増加を検討しなくてはなりません。使う電力と貯める電力、両方のバランスを考えながら設置することで、効率の良い蓄電システムを導入することができます。
蓄電システムのデメリット④:設置スペースが必要になる
蓄電システムは設置場所の確保が必要になります。効率的に運用するには、直射日光が当たらない場所、寒冷すぎない場所が原則です。雪国では積雪、沿岸部では塩害の影響も考慮する必要があり、メンテナンスの際の作業スペースも考えなくてはなりません。火災による被害を受けない場所に設置することも推奨されています。
産業用蓄電池と家庭用蓄電池について、特徴から違いまで解説
産業用蓄電システムとは?特徴について解説
産業用蓄電システムとは、名前の通り産業用に開発された蓄電システムのことです。大容量に設計され、非常時の停電にも耐えうる蓄電容量を有しています。さらに、日常的な自家消費にも対応。企業が普段の電力として活用しながら非常時の電力供給源としても使用できるような優れた性能の蓄電システムです。庁舎や公共施設をはじめ、病院や学校など、災害時に人が集まるような場所や、畜産・酪農施設や上水道施設など、24時間電力を必要とする場所にも多く導入されています。
家庭用蓄電システムとは?特徴について解説
家庭用蓄電システムは前段でご説明したトライブリッド(電気自動車と太陽光発電、蓄電池の3つを融合したシステム)など、家庭生活において使用しやすく、低価格で使用できるように開発されています。特に電気自動車とは相性が良く、停電時にも電気が使えるなど災害対策として導入するご家庭もあります。
蓄電池の種類について
蓄電池には主に4つの種類があります。それぞれの特徴やメリット・デメリットについて解説していきます。
鉛蓄電池
最もベーシックで歴史的にも古い蓄電池が鉛(なまり)蓄電池です。一般的に蓄電池は過充電すると劣化や発熱の危険がありますが、鉛蓄電池は過充電への耐久性に強く、安全性も高い蓄電池です。温度変化にも強いため、車のバッテリーなどでよく使用されています。
ニッケル水素電池
リチウムイオン電池が登場するまで、急速充電が可能なため携帯電話やノートパソコンなどに使用されていたのがニッケル水素電池です。充電型の乾電池などにもよく使用されます。過充電、過放電に強く安全性が高いことと、繰り返し使えて輸送も簡単であることから、幅広い用途で使用されています。また、軽くて小型なため、人工衛星にもニッケル水素電池が使用されています。ただコストがやや高く、寿命が5~7年と短いのが課題です。さらに、「メモリー効果」と呼ばれる、充分放電しないうちにつぎ足し充電してしまうと電池残量が少なく見える現象が起きます。容量の低下は見かけだけで実際には容量はほとんど低下していないのですが、この性質のため少々使いづらい面があります。
リチウムイオン電池
現在私たちのモバイル電子機器に搭載されているのがこのリチウムイオン電池です。エネルギー密度(単位体積もしくは単位質量当たりから取り出せるエネルギー量)が高く、コンパクトでパワフルな蓄電池と言えます。
さらに、前述の「メモリー効果」と呼ばれる現象が出現しません。
高温の場所で使ったり、過充電し続けたりすると膨張や爆発の可能性もあるため管理には注意が必要ですが、モバイル社会においてなくてはならないのがこのリチウムイオン電池です。リチウムイオン電池の生産にはコバルトなどのレアメタル(希少金属)が必要で、資源の確保が課題となっています。
NAS電池
日本ガイシ株式会社が世界で初めて実用化したメガワット級の電力貯蔵システムです。エネルギー密度が大変高く、大容量で、長期にわたり安定した電力を供給できます。主に大規模の電力貯蔵用に作られ、昼夜の電力負荷を平均化したり、風力発電と組み合わせて離島での安定した電力供給に用いられたりします。
希少金属を一切使用せずに作られていることから資源的な制約もなく、将来的に生産量を増やせることが魅力です。
太陽光発電と蓄電池の同時設置がおすすめ!併用するメリットについて解説
蓄電池は太陽光発電との相性がとても良いです。太陽光発電のデメリットを蓄電池が補うことで安定した電力供給に繋げることができます。
電気代削減につながる
今後電力はますます貴重となっていくことが見込まれます。電気代が高騰していくことはほぼ確定路線と考えられる中、太陽光発電や蓄電システムを備えることによって、電力の購入量が削減できることは大変有力な省コスト手段です。見通しのきかない電力価格に悩む必要もなく、製品原価の低減にもつなげることができます。また、環境負荷低減へ貢献することでESG経営のような、長期的な視点での企業成長を目指す経営にもつながります。太陽光発電と蓄電システムの導入は、電力コストの削減と、それにとどまらない企業成長への第一歩となります。
停電時などの緊急事態でも電気が使える
太陽光発電と蓄電池システムの大きなメリットは、災害や事故などで停電した場合でも電気が利用できることです。これはご家庭だけでなく、企業のリスクマネジメントとしても大変注目されているメリットです。東日本大震災以降、災害時の電力確保を喫緊の課題として捉える企業が多くなりました。災害時だけでなく、通常時から自家消費できる形で使用すればエネルギーコスト削減にもなり、社内の太陽光発電に対する経験やノウハウも醸成されます。災害停電時の非常電源として周辺地域に電力を開放することができれば、社会貢献にもつながります。
夜間でも太陽光発電が利用できる
昼間の電力は高コストなため、太陽光発電で作った電力は昼間に利用する方が多いですが、春季・秋季など昼間の電力が抑えられる季節には夜に電力を回すことも大きなメリットを生みます。病院や工場など、24時間の稼働が必要な場所でも電力の夜間使用は行われています。
買取制度終了後に自家消費を増やすことができる
固定価格買取制度(FIT制度)による優遇価格での売電が終了し、今後、売電による高い収益は見込めません。
ただ、自家消費であれば活用の道は開けています。国際情勢の悪化や脱炭素政策など、今後も電力コストは増加すると予測されています。自家消費を増やすことができれば電力コストに悩まされることも少なくなりますし、災害など非常時にも電力停止リスクを避けられます。
同時設置の方が後から別々で設置するよりも導入コストを抑えられる
太陽光発電と蓄電池を別々に設置するよりも、同時に設置したほうが人件費や運搬費用などが抑えられます。また、設置に関する部材費も無駄が少なくなるため全般的なコストカットにつながります。さらにメンテナンス面でも機器単体ではなく全体がメンテ対象となるため、機器間の連携部分など見えにくい部分も含めたメンテナンスが可能となるという面もあります。メリットが増える太陽光発電と蓄電池の導入は、セットで行うことがおすすめです。
蓄電システムの施工事例
蓄電システム設置事例:山一電機株式会社様
半導体の検査市場において欠くことのできない製品を製造していらっしゃる山一電機様。2019年に千葉県を襲った大型の台風により停電が発生し事業停止を余儀なくされました。その経験を活かし当初は非常用の発電機の導入をご検討されましたが、燃料の調達や有事の際の稼働が安定しないなどの問題から、太陽光発電にNAS電池を組み合わせた蓄電システムの導入へと変更されました。
最終的には有事だけでなく通常時から太陽光発電を自家消費する形で活用され、リスクマネジメント面だけでなく、省エネや脱炭素、ESGという観点からも効果の高い導入事例となりました。
まとめ
蓄電システムを導入すること、またそれを太陽光発電と組み合わせて使用することで自家消費やリスクマネジメントをはじめとした様々なメリットがあることがお分かりいただけたでしょうか。今後はさらに電力コストが上がっていくことが予想されています。メリットやデメリットを初期費用やメンテナンス費用などと合わせてご検討いただくことが大切です。今後もその材料となるような情報を積極的にお伝えしてまいります。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。