脱炭素で伸びる企業は?
日本での脱炭素の取り組み状況もご紹介
どんな企業が伸びる?日本企業の取り組みを徹底リサーチ!
INDEX
日本企業における脱炭素取り組み状況
そもそも脱炭素とは何か?詳しく解説
脱炭素経営が高い注目を集めています。パリ協定以降、国際的な約束事として定められてきた脱炭素へ向けての取り組みですが、日本の企業はどのような施策を行っているのでしょうか。今回は具体的に、日本における企業の取り組み状況や脱炭素経営を通して伸びる企業のポイントをお伝えしていきます。
脱炭素経営における日本企業の取り組み状況は環境省のサイトで見ることができます。
<参考リンク>
環境省『企業の脱炭素経営への取組状況』
まず参考となる次のようなキーワードをチェックしておくとわかりやすいです。
・RE100…使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標とした企業が加盟する団体
・SBT…各企業が科学的な根拠にもとづいて設定する温室効果ガス排出削減目標。この削減目標を設定するよう求める国際的な枠組みをSBTi(SBTイニシアティブ)と言う。
・TCFD…企業等に対して気候変動問題に対する取り組みや、財務への影響の開示を求める国際的な組織
<参考リンク>
「企業の脱炭素経営への取組状況」(環境省)
脱炭素経営に向けた取組の広がり(TCFD、SBT、RE100 取組企業数/2022年12月31日時点/pdf)
世界の中でも日本は、TCFD、SBT、RE100に取り組んでいる企業の数がトップクラス(2022年9月30日時点)となっており、脱炭素経営に対する国内企業の理解が進んでいると考えられます。SBTで目標設定した会社の具体的な目標値は、環境省のサイトで閲覧することが可能です。各企業の意識の高まりと、脱炭素に向けての覚悟や意気込みを感じ取ることができます。
<参考リンク>
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(環境省)
「SBT取り組み事例」(環境省)
環境省は、脱炭素経営に関する情報プラットフォームとして「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」を設けており、SBTを設定したい企業やRE100に参画したい企業に向けての情報を発信しています。ここでは、脱炭素経営を目指す企業を「脱炭素経営促進ネットワーク会員」として認定し、中でもSBTを設定した企業に対しては「SBT目標設定済み企業」、SBTをコミットした企業に対しては「SBTコミット済み企業」、そして目標設定のためのソリューションを提供する事業者には「支援会員」として認定しています。オムロン フィールドエンジニアリング株式会社はこの「支援会員」として脱炭素経営と企業の成長を促進するソリューションを各社に提供しています。
<参考リンク>
「脱炭素経営」に関する情報プラットフォーム
グリーン・バリューチェーンプラットフォーム(環境省)
脱炭素で伸びる企業は?
いくら政府が企業に対して脱炭素経営を推進しているとはいっても、企業の財務を圧迫するようでは全国的な取り組みは期待できません。ここからは、脱炭素経営を通して成長が見込まれる企業の特徴を解説していきます。
①二酸化炭素の排出を抑制している企業
二酸化炭素は地球温暖化に及ぼす影響が最も大きな温室効果ガスと言われています。二酸化炭素の排出を抑えることができれば、それは脱炭素の取り組みとして大きな成果があると言えます。では各企業は二酸化炭素をどこで排出しているのでしょうか。製造業を例にとると、主に電気や自動車(運輸)です。これらは企業活動と直結しているため単純に減らすことはなかなかできません。そこで二酸化炭素の排出を削減する方法として再生エネルギー由来の電力への切り替えや、環境にやさしい車の導入などが検討されています。
再エネ(再生エネルギー)由来の電力使用は高額なイメージがあるかもしれませんが、近年の電気料金の高騰により、利用状況によっては通常の電気料金とあまりコストが変わらない場合もあります。さらに太陽光発電システムなどを導入すれば、災害時に電力会社の停電などが発生しても電力が確保できるなど、リスクマネジメントの上でも効果が見込めます。
電力の供給コストとリスクマネジメントの面だけではありません。環境意識の高さがうかがえる脱炭素への取り組みは投資家からも高く評価されています。パリ協定に基づき、今後も世界が脱炭素へ向けて動いていくことは確定的です。脱炭素経営(二酸化炭素の抑制)はその状況を理解し、10年先、20年先を見据えた経営ができる企業だということを示唆しているのです。
②二酸化炭素の排出抑制の技術を持っている企業
今後さらなる二酸化炭素の排出抑制を迫られている各国や企業にとって、二酸化炭素排出を抑制できるような技術やシステムの開発は、重要なビジネスチャンスです。
例えば再エネ由来の電力の確保や蓄電に関する技術、省エネに関する技術、二酸化炭素の排出が少ない自動車部品の開発など、CO2排出の大幅減少に貢献するような技術が開発されれば、世界中の多くの企業で採用されることでしょう。
現在注目されているCO2排出抑制技術には、「メタネーション」(二酸化炭素と水素を合成してメタン燃料を製造すること)や「バイオエタノール」(ガソリンの代替となる燃料を生物資源/バイオマスから生成すること)などがあります。これらの実用化や普及が待たれるとともに、これまでにないCO2排出抑制技術の開発が期待されています。
③知識や人材を提供できる企業
脱炭素経営は持続可能な社会の実現を目指す企業にとって避けられない課題のひとつですが、脱炭素経営を実現するための知識や人材はまだまだ充分とは言えません。そういった意味では、脱炭素経営に関する専門的な知識や経験、ノウハウやそれを持った人材を提供できる企業は非常に有望だと言えます。
脱炭素経営そのものに詳しいことはもちろん社会から求められる能力となっていきますが、脱炭素を実現するためのソリューションを提供できる知識や研究開発能力もこれから必要とされる能力です。
②でもご説明した通り、今後は世界中で脱炭素に関する技術や製品が求められていきますし、それを開発できることは企業にとっても大きなビジネスチャンスです。今後ますます、脱炭素関連の技術開発は活況を呈していくでしょう。
④資源を確保している企業
脱炭素経営にまつわる人材や知識、技術を持っている会社だけが躍進していくとは限りません。それらの会社に資源を提供している会社も、二次的に脱炭素経営をバックアップする重要な存在となります。例えばバイオマス燃料製造の過程では、大豆やトウモロコシ、小麦など、バイオマス燃料の原料となる穀物が高騰しているというニュースがあります。これらを保有・生産している企業の価値は必然的に上昇することが考えられますし、その提供に際して物流などを請け負う会社も付随して成長が見込まれます。
脱炭素に関するイノベーションが起こることで、今まで1の価値であったものが10や100になる。そんな現実を目の当たりにする機会はこれからも増えていくことでしょう。世界のエネルギー転換をリスクと捉えるかチャンスと捉えるかによって、企業の未来は大きく変わっていくということが言えそうです。
脱炭素社会で伸びる企業の分野とは?
脱炭素社会の実現によって成長が期待される分野とはいったいどこなのでしょうか?ここからは3つの業界と脱炭素を推進する団体に焦点を当てて、脱炭素との接点を解説していきます。
④資源を確保している企業
日本の基幹産業と言える自動車業界。パリ協定によって多くの国々でガソリン車の廃止が決定している中で、早急に製品の転換が進められています。他の業界と比較して一部の製品の廃止がほぼ決定している自動車業界ではすでに様々な技術が開発され、各社の方針としても急速に脱炭素化が進められている状況です。
ハイブリッドカー(HV)や電気自動車(EV)の販売比率は順調に推移し、新しいモデルの販売も次々に進められています。政府が電気自動車の購入に対してインセンティブを与えたことに加え、公共の充電ステーション設置も推進しているため、今後も自動車業界の脱炭素化による成長は続いていくと予想されています。
<参考リンク>
EV・PHV情報プラットフォーム(経済産業省)
クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金
「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金(充電設備やV2H充放電設備の購入費及び工事費、水素ステーションの整備費及び運営費、外部給電器の購入費に対する補助金)」(経済産業省)
電力業界
電力は人々の暮らしになくてはならないインフラです。昨今では特に化石燃料から再生可能エネルギーへの切り替えが急速に進んでいます。日本では再エネの電力比率は18%(2019年度)と、世界の主要国と比較してまだまだ低い水準です。
進んでいるのはカナダで、59%を水力発電、7.3%をそれ以外の再エネ発電(太陽光・風力・地熱・バイオマス発電など)で賄っています。イタリア(39.7%)やドイツ(35.3%)などヨーロッパ各国も健闘しており、日本は今後ますます再エネへの切り替え需要が高まっていくと予想されています。
一方、世界から見て日本が再エネ由来発電で健闘している分野は、太陽光発電です。太陽光発電の導入容量(2018年実績)で見ると日本は世界第3位と、高い導入実績があります。この背景にはFIT制度(固定価格買取制度)など国の普及促進政策が大きく影響しています。2012年7月にFIT制度(固定価格買取制度)が導入されて以降、10%だった再エネ比率が、2019年度には18%まで拡大しました。(※下記サイト参考)
再エネ由来エネルギーへの切り替えが急務である中、太陽光発電をはじめとした電力業界への期待はますます高まっています。
<参考リンク>
資源エネルギー庁スペシャルコンテンツ
「もっと知りたい!エネルギー基本計画① 再生可能エネルギー(1)コスト低減、地域の理解を得てさらなる導入拡大へ」
日本のエネルギー 2020年度版(資源エネルギー庁)
「エネルギーの今を知る10の質問」7.再エネ
電機業界
脱炭素への変遷は産業界だけでなく、運輸や家庭、エネルギー転換に至るまで、生活のありとあらゆるところに訪れています。そのどれにも少なからず関わってくるのが、電機・電子業界です。家庭に近い分野での例を挙げると、スマートホーム(IoTやAIの技術を活用し、より快適で省エネな生活を実現する家のこと)やスマートグリッド(IT技術を活用して電力の供給側と事業所などの需要側とを自動制御し、効率よく電力量を分配する送電網のこと)を実現する技術は、環境問題と経済問題を解決する手段として期待されています。
さらに太陽光発電システムなどで発電した電力を蓄える「蓄電池」は注目の分野です。より効率の良いエネルギー利用に向けて、電機業界は今後さらに蓄電システムの開発と革新を進めていくでしょう。
また、蓄電池については特に車載用の電池が今後大きな拡大を見せると予想されています。自動車業界の項でもお伝えした通り、今後は電気自動車(EV)の市場が急速に拡大することが確定的です。それに伴った車載用リチウムイオン電池などの生産と技術開発が進められています。
RE100参加企業
冒頭でご説明したTCFD(企業などに対して気候変動問題に対する取り組みや、財務への影響の開示を求める国際的な組織)やSBT(各企業が科学的な根拠にもとづいて設定する温室効果ガス排出削減目標)、RE100(使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標とした企業が加盟する団体)など、様々な枠組みの中で積極的に参画している企業も、成長が期待できると言えます。次の章ではそれらの中でも特に、RE100に絞って詳細をご説明していきます。
RE100 日本企業最新リスト
RE100とは?
「RE100(アールイーひゃく)」とは、使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目標とした企業が加盟する団体です。RE100に参加した企業も、今後成長が見込まれる企業として期待されています。RE100に参加するためには厳しい審査が必要で、国内で信頼されている企業であることや、多国籍企業であることなどの国内影響力はもとより、脱炭素についての取り組みの宣言や公開、年次報告についても細かく義務付けられています。
2023年1月現在、正式に登録しているのは77社です。RE100に参加することは影響力がある企業ブランドの証明でもあり、エネルギーコスト管理について広範囲な視野を持った、賢明な企業であることをも示唆しています。これは投資家や政府への強いアピールになるとともに、国内トップクラスの脱炭素企業としてイニシアチブを取る強力な手腕があることも示しています。
日本はRE100の参加企業数では世界第2位を誇っています。(2022年9月30日時点)
<参考リンク>
企業の脱炭素経営への取組状況(環境省)
RE100参加 日本企業最新リスト
RE100に参加している⽇本企業77社の⼀覧(2023年1⽉10⽇現在)
※業種内五⼗⾳順
【建設業】旭化成ホームズ/安藤・間/インフロニア・ホールディングス/熊⾕組/住友林業/積⽔ハウス/⼤東建託/⼤和ハウス⼯業/東急建設/⼾⽥建設/⻄松建設/LIXILグループ
【⾷料品】サヒグループホールディングス/味の素/キリンホールディングス/⽇清⾷品ホールディングス/明治ホールディングス
【化学】花王/資⽣堂/積⽔化学⼯業
【医薬品】エーザイ/⼤塚ホールディングス/⼩野薬品⼯業/第⼀三共
【ゴム製品】住友ゴム⼯業
【ガラス・⼟⽯製品】TOTO/⽇本ガイシ
【⾮鉄⾦属】フジクラ
【⾦属製品】ノーリツ
【電気機器】アドバンテスト/カシオ計算機/コニカミノルタ/セイコーエプソン/ソニーグループ/ダイヤモンドエレクトリックホールディングス/TDK/ニコン/⽇本電気/パナソニックホールディングス/浜松ホトニクス/富⼠通/富⼠フイルムホールディングス/村⽥製作所/リコー/ローム
【精密機器】島津製作所
【その他製品】アシックス/オカムラ
【陸運業】東急
【情報・通信業】Zホールディングス/BIPROGYグループ/野村総合研究所
【⼩売業】アスクル/イオン/コープさっぽろ/J.フロント リテイリング/セブン&アイ・ホールディングス/⾼島屋/丸井グループ/ワタミ
【銀⾏業】城南信⽤⾦庫
【⾦融・保険業】第⼀⽣命保険/T&Dホールディングス
【その他⾦融業】アセットマネジメントOne/芙蓉総合リース
【不動産業】いちご/ジャパンリアルエステイト投資法⼈/東急不動産/野村不動産ホールディングス/ヒューリック/東京建物/三井不動産/三菱地所/森ビル
【サービス業】エンビプロ・ホールディングス/セコム/楽天
<参考リンク>
RE100概要資料(環境省/PDF/695KB)
まとめ
脱炭素を世界的に進めるには各国政府の積極的な支援とともに、産業を担う企業のさまざまな努力が必要不可欠です。各企業が協力して脱炭素へのソリューションを生み出し、明確な道筋をつけながら実践していくこと。それとともに企業運営の中で着実に温室効果ガス排出削減の成果を積み重ねることが、今後の日本の脱炭素社会実現のカギを握っているとも言えます。
今後もRE100やSBTなど重要なキーワードを踏まえながら各業界の動向について詳しくお伝えしてまいります。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。