2023年度、脱炭素化促進に役立つ補助金は?
太陽光発電の導入支援など、脱炭素化の取り組みを加速する補助金の活用について
企業に対する「脱炭素化」実現の要請は世界中で高まっており、我が国においても菅首相(当時)の「カーボンニュートラル宣言」以来、多くの大企業がカーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを開始。また昨今の電気料金の高騰は多くの企業を悩ませ、現在では大企業のみならず中小企業においても電気料金削減と脱炭素化への積極的な取り組みの検討を始める企業が増えています。こういった企業の取り組みを支援し加速してくれるのが[補助金]です。
INDEX
- 脱炭素化の取り組み強化、高騰し続ける電気料金、企業の課題は深刻
- 予算を上回る多くの申請で公募が早期に終了
- ストレージパリティ補助金(環境省)は、早々に公募を終了
- 来年度使える、太陽光発電・蓄電池の導入から省エネまで。脱炭素化の推進に向けた補助金
- ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業(環境省)
- 新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業(環境省)
- 工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業/環境省)
- 系統用蓄電池等の導入及び配電網合理化等を通じた再エネ導入加速化事業 (経済産業省)
- 需要家主導による太陽光発電導入促進補助金(経済産業省)
- 採択の鍵は早めの準備。来年度に補助金を検討するなら今から準備を!
脱炭素化の取り組み強化、高騰し続ける電気料金、企業の課題は深刻
地球温暖化や異常気象のような世界的問題を背景に、企業の脱炭素化/カーボンニュートラルの取り組みがますます重要視され、多くの企業が脱炭素化の実現に向け奮闘努力しています。先日も電力会社が企業向けの電気料金の値上げを発表し、それに伴い大型の工場では年間に1億円以上も電気代が上がる可能性もあるとのこと。このように、昨今高騰し続ける電気料金の問題も解決すべき課題として企業にのしかかっています。そのような状況で多くの企業が検討・実行するのは、自家消費型太陽光発電の導入による再エネ電力使用比率の向上です。これにより高騰する電力コストを削減し、脱炭素化の実現を加速できるからです。こういった企業の取り組み推進を支援するべく、国はさまざまな補助事業を実施・前年を上回る大きな補助金を用意して、その活用を企業に促しています。
予算を上回る多くの申請で公募が早期に終了
補助金無しでも十分投資効果が得られるようになってきましたが、補助金の活用により更なる費用対効果のアップが期待できます。そのため、補助金を活用したいと考える企業は増加傾向にあるようです。それを裏付けるように、太陽光発電導入をはじめとする脱炭素化推進に向けた補助金の中には、予算を上回る多くの申請が集まり、公募を早期に締め切ることになってしまったものも出てきています。
ストレージパリティ補助金(環境省)は、早々に公募を終了
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減 促進事業(二酸化炭素排出抑制対策事業費等 補助金)はストレージパリティの達成に向けて、オンサイトPPAモデル等による自家消費型太陽光発電や蓄電池等の導入を支援することを通じ、地域や企業の脱炭素化実現に資することを目的とする補助事業です。令和3年度補正として、2022年3月31日より第一次公募を開始し、予算額に達した場合はそれ以降の公募を取り止めるとしながらも、第三次公募(7月29日締め切り)までを設定していましたが、第二次公募時点でその予算額に到達し、6月15日の第二次公募の締め切りをもって、早期に終了しました。
来年度使える、太陽光発電・蓄電池の導入から省エネまで
脱炭素化の推進に向けた補助金
今年も例年通り8月末までに、各省庁から来年度予算の概算要求が公表されました。なかでも脱炭素化の実現に当てられる予算は軒並み前年を上回る要求額となりました。ここでは来年度使える脱炭素化の推進、特に太陽光発電の導入支援等に向けた補助金をご紹介します。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 (環境省)
(二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金) <太陽光発電・蓄電池等の設備の導入支援>
地域や企業の脱炭素化実現に資することを目的とする補助事業です。ストレージパリティの達成に向け、オンサイトPPAモデル等による自家消費型太陽光発電や蓄電池等の設備の導入を支援します。2022年は予算額を上回る申請のため第二次公募時点で補助金予算額に到達し、6月15日の第二次公募の締め切りをもって早期に公募終了となりました。
※ストレージパリティとは、太陽光発電のみを導入した時の[太陽光発電+電気代]の価格よりも、太陽光発電と蓄電池をセットで導入した時の[太陽光発電+蓄電池+電気代]の価格の方が安くなることです。
R5概算要求額 | 200.0億円 |
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補助率 | 定額(補助対象経費の1/3を上限とする) ◆基準額
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補助対象 | 業務用施設・産業用施設・集合住宅・戸建住宅への自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池(車載型蓄電池を含む)の導入支援 *蓄電池(V2H充放電設備含む)導入は必須 *太陽光発電の発電電力を系統に逆潮流しないものに限る(余剰電力の売電不可)※戸建て住宅を除く 委託:ストレージパリティ達成に向けた課題分析・解決手法に係る調査検討を行う |
交付要件 |
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公募日程 | 一次:3月31日から5月9日 二次:5月16日から6月15日 ※2022年実績 |
※本補助事業は環境省の「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 」のひとつとなっています。
※2023年度は「※蓄電池(V2H充放電設備含む)導入は必須」と明記されているため、蓄電池についても考えておく必要があります。
新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業 (環境省)
<太陽光発電等の設備の導入支援>
ストレージパリティ補助金と同様に、環境省(一部、農林水産省・経済産業省連携)の「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業 」のひとつです。
- ・地域の再エネポテンシャルを有効活用するため、地域との共生を前提とした上で、新たな手法による太陽光発電の導入・価格低減を促進すること
- ・再エネ熱利用、未利用熱利用、自家消費型再エネ発電等の導入・価格低減を促進すること
- ・熱の脱炭素化推進
- を目的とした補助事業です。
R5概算要求額 | 200.0億円 |
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補助率 | 設備導入:1/3又は1/2。 ※熱分野・寒冷地での脱炭素化先行モデル創出事業のみ2/3 計画策定:3/4(1,000万円を上限とする) |
補助対象 |
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補助対象の コスト要件 |
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公募日程 | 補助対象事業により異なる。 概ね3月中旬より一次公募が開始され、7月中にすべての公募が終了 ※2022年実績 |
工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業/環境省)
<省エネ、省CO2設備更新支援・CO2削減計画策定支援など>
工場・事業場における脱炭素化のロールモデルとなる意欲的なCO2削減目標・計画を策定した上で、省CO2型設備更新、電化・燃料転換、運用改善をパッケージで実施し、CO2を絶対量で着実に削減する取り組みを支援、その知見を公表し、横展開を図ること。さらに、個社単位の取り組みを超えて、企業間で連携してサプライチェーンの脱炭素化に取り組む先進的なモデルを創出することを目的とする事業です。
※SHIFT = Support for High-efficiency Installations for Facilities with Targets(対象となる施設の高効率導入支援)
R5概算要求額 | 100.0億円 |
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補助率 |
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主な 補助対象設備 |
空調設備、給湯器、コージェネ、冷凍冷蔵機器、EMS ※再エネ設備は、他の主要設備とセットで導入する場合に限る。 |
事業概要 |
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公募日程 | 設備更新補助事業:(一次)4月13日から5月20日 (二次)8月2日から9月2日 計画策定支援事業: 4月13日から6月20日 ※2022年実績 |
本事業の計画策定支援事業は、脱炭素化の取り組みの必要性を感じているが具体的にどのように対策したらよいかわからない、外部の専門家に相談したい、と言った事業者におすすめです。また設備更新補助事業については、CO2削減余地の把握や対策の検討がすでに完了しているので、計画を速やかに実行したい、補助金を活用して高効率設備の導入や燃料転換などで確実にCO2削減目標を達成したい、と言った事業者におすすめの事業です。
系統用蓄電池等の導入及び配電網合理化等を通じた再エネ導入加速化事業(経済産業省)
<系統用蓄電池・水電解装置の導入支援>
2050年カーボンニュートラルの実現に向け再生可能エネルギーの導入の加速化等を図ることを目的とする事業です。
R5概算要求額 | 100.0億円 |
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補助率 | 2/3以内、1/2以内、1/3以内 |
事業概要 |
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公募日程 | 一次:2月16日から3月11日 ※2022年実績(公募は一次時点で予算額到達のため終了) |
※系統用蓄電池とは、電力系統につないで利用される大規模(大容量/大型)な蓄電池のことです。例えば太陽光発電システムによる発電所や基幹系統につなげば、電力が余った時は蓄電し、不足したら放電することによって系統電力の安定化に貢献できます。
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金(経済産業省)
<太陽光発電設備の導入支援>
本補助事業の目的は、需要家主導による新たな太陽光発電の導入モデルの実現を通じ、再生可能エネルギーの自立的な導入拡大を促進することです。
R5概算要求額 | 165.0億円 |
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補助率 | 2/3又は1/2。 ※自治体連携型:2/3、その他:1/2 |
事業概要 |
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公募日程 | 一次:3月15日から4月22日 二次:5月16日から6月17日 ※2022年実績 |
なお、来年度は蓄電池併設型の設備導入について支援が拡充されます。
採択の鍵は早めの準備。来年度に補助金を検討するなら今から準備を!
各種補助事業の概算要求をみると来年度も「脱炭素化」や「再エネ電力設備の導入」には多くの予算が要望されており、政府としても企業や団体に対し、補助金の活用によって再生可能エネルギー普及への貢献やそれを通じた「脱炭素化」の取り組みを今以上に進めて欲しいと考えていることがわかります。また来年度の補助金交付要件からは、蓄電池が重要視される傾向も見えてきます。このように補助金の交付要件も、毎年変化しているので注意が必要です。
採択を目指すには、事業の意図を汲み、計画的に準備を進めることが重要になります。導入設備の選定に加え、導入計画の立案、必要な情報を集め申請資料を作り上げるだけでも多くの時間が掛かります。また場合によっては、申請ノウハウを保有し補助金に精通した専門家を頼ることも必要となってくるでしょう。2022年度の実績からもわかりますが、補助金公募は年度の前半に集中しています。来年度の採択を目指すなら今すぐに準備を始めるのが得策です。
電気料金の高騰・今後の上昇リスクに悩んでいる、CO2削減を実行したい、設備投資の費用をできる限り抑えて太陽光発電を導入したい等、さまざまなお悩みの解決を当社が支援させていただきます。今すぐにご相談ください。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。