【2024年最新】脱炭素に向けた企業の取り組みについて
事例も交えて徹底解説!
世界各国や国内企業の具体的な取り組み状況をわかりやすくレポート!
INDEX
脱炭素とは
そもそも脱炭素とは何か?詳しく解説
脱炭素とは、地球温暖化の原因となる「温室効果ガス」の排出量を「実質ゼロ」にすることです。(「実質ゼロ」とは、削減による排出ゼロを目指すという意味だけでなく、やむを得ない排出分を植林やリサイクル活動によって相殺する考え方を反映しています。)
人類は産業革命以降、二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスをたくさん排出してきました。それによって起こる気候変動問題を一刻も早く改善するため、脱炭素社会の実現が求められています。
今回はそんな「脱炭素」について、具体的な企業の取り組みを交えながらご説明していきます。
脱炭素が叫ばれるようになってきた背景
そもそも脱炭素が叫ばれるようになった背景として、地球規模の異常気象問題が挙げられます。40℃を超える顕著な高温をはじめ、干ばつ、洪水、寒波(※)など…
さまざまな異常気象が、人々や動物、植物、その他多くの生命と環境を破壊しています。それらの異常気象を、世界各国が一丸となり早急に解決しなくてはならないとして、2015年「パリ協定」が採択されました。
※(参考)気象庁「世界の異常気象」
異常気象については、高温・低温・多雨・少雨という表現が適切ですが、記事内では分かりやすく干ばつ・洪水などの表現を用いています。
【2050カーボンニュートラル宣言】
「パリ協定」はいわば、「温室効果ガスを削減しよう」という世界的な合意です。それに伴い、日本政府として示されたのが「2050カーボンニュートラル宣言」。2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという宣言です。
この日本政府の宣言によって、日本の温室効果ガス対策は大きな1歩を踏み出すことになりました。
【2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略】
政府としての具体的な指標は「2050カーボンニュートラル宣言」によって示されましたが、もちろんこれを実現することは並大抵の努力ではできません。イノベーションを創出したり、エネルギーの需給構造を見直したり、産業のありかたを大規模に転換したりといった大きな取り組みが必要となります。そのためのサポートとして、日本政府から、より具体的に示された政策が「グリーン成長戦略」です。
グリーン成長戦略は、政府からカーボンニュートラルに向けて研究開発や経営方針の転換を行う企業や産業界にむけて、そのチャレンジや変革を加速させることを目的とした政策です。
グリーン成長戦略の中には、次のような言葉があります。
「発想の転換」、「変革」といった言葉を並べるのは簡単だが、カーボンニュートラルを実行するのは、並大抵の努力ではできない。産業界には、これまでのビジネスモデルや戦略を根本的に変えていく必要がある企業が数多く存在する。他方、新しい時代をリードしていくチャンスでもある。大胆な投資をし、イノベーションを起こすといった民間企業の前向きな挑戦を、全力で応援するのが、政府の役割である。
※2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略(令和3年6月18日)
内閣官房/経済産業省/内閣府/金融庁/総務省/外務省/文部科学省/農林水産省/国土交通省/環境省
税制・金融・国際連携など、あらゆる政策を総動員して国が企業を後押しし、産業や社会の変革を実現する。その確固たる意志がグリーン成長戦略によって示されました。
脱炭素を知る上で重要なワード
脱炭素とは「温室効果ガス」の排出量を「実質ゼロ」にすることですが、脱炭素を語るうえでなくてはならない重要なワードが次の5つです。簡単にまとめます。
【パリ協定】
地球規模で問題とされている気候変動問題を解決するために、温室効果ガス排出削減などを目指した国際的な協定のこと。2015年にパリで開かれたCOP21で合意されました。具体的には「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をする」という基本方針が定められています。パリ協定は歴史上はじめて、すべての国が参加した公平な合意であり、翌年に行われた署名式では175の国と地域が署名しました。ひとつの国際条約に署名する一日の署名国数としては歴史上最大で、当時の国連事務総長も賞賛の言葉を送りました。
【SDGs】
SDGsは、2015年に国連サミットで採択された、「持続可能な世界を実現するための国際目標」です。持続可能な世界とはどういう状態を指すのか。それをご理解いただくにはそれまでの人類の歴史を振り返る必要があります。産業革命以降、人類はさまざまな開発を進め発展を続けてきました。もちろんそれは経済的に豊かな国々を生み出し、イノベーションをもたらしました。ただそれと同時に、環境破壊や傷ついた人々、貧困に苦しむ人々をも同時に生み出してしまいました。
多くの国際機関がそれを問題とし、本当の豊かさとは何か、世界がよりよくなっていくためにどんな取り組みが必要かを繰り返し話し合いました。そして2015年、経済・社会・環境の面で社会が目指すべき世界共通の目標として掲げられたのがSDGs(Sustainable Development Goals)です。SDGsの具体的な目標として、17のゴールとその課題ごとに169の達成基準(ターゲット)が設定されています。
【カーボンニュートラル】
カーボンニュートラルとは、直訳すると「カーボン(炭素)」を「ニュートラル(中間)」の状態にすること。つまり、温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させることを意味しています。均衡させるというのは、実質的なゼロを目指すということです。実質的なというのは、単純に温室効果ガスの排出量を削減してゼロにするという方法だけではなく、温室効果ガスの「排出量」から、植林や森林管理などで得た「吸収量」を差し引いて「実質ゼロ」の状態に近づけていく方法も用いるという意味です。実質的なゼロを目指すという点では、「脱炭素」と同じ意味で使われることもあります。
2020年10月に、政府は「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」「2050カーボンニュートラル宣言」をしました。
【SBT】
SBTとは、企業の脱炭素に向けた目標設定のことです。Science Based Targetsの略で、「科学的根拠に基づいた目標」と訳されます。
SBTが生まれた背景には、2015年のパリ協定があります。パリ協定で定められた「2℃目標(産業革命以降の気温上昇を2℃に抑えること、そしてさらに1.5℃を目指すこと)」を達成するために、各企業が5年~10年以内の具体的な数字と期限を提示して温室効果ガスの削減目標を定めています。
※環境省 SBT 概要資料(PDF/482KB)
※環境省 グリーンバリューチェーンプラットフォーム 「国際的な取組」
SBTに参加する企業は年々増加しており、認定企業数では日本は世界3位とトップクラスを維持しています。またコミット(目標達成)する企業も増加しており、脱炭素に取り組む企業にとって外せないイニシアチブとなっています。
各企業のSBTは環境省のサイトで閲覧することができます。
※環境省サイト「SBT取り組み事例」
【RE100】
RE100(アールイーひゃく)とは、電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業の加盟連合です。日本だけではなく世界中で取り組みが行われており、脱炭素に向けての目標設定や活動内容を毎年報告しています。RE100に加盟する企業は国際的にも環境配慮のイニシアチブをとる認知度・信頼度の高い企業です。日本ではアメリカに次ぐ77社(2023年1月現在)が加盟しています。
日本と世界の脱炭素の取り組みは
パリ協定では、全ての国が温室効果ガスの排出削減目標(NDC「国が決定する貢献」と呼ばれています)を提示し、5年ごとに更新する義務が定められました。脱炭素に向けて各国がどのようなゴールを掲げ、どう動くか。それを数字をもって具体的に宣言しています。ここからは、日本と世界の取り組みをご紹介していきます。
日本の脱炭素の取り組みと掲げている目標
日本はパリ協定(2015年)合意の際に、「日本のINDC(約束草案)」として「国内の排出削減・吸収量の確保により、2030年度に2013年度比-26.0%(2005年度比-25.4%)の水準(約10億4,200万t-CO2)にすること」としました。
さらにその6年後、2021年には、「日本のNDC(国が決定する貢献)」として「2030年度に温室効果ガスを2013年度から46%削減することを目指す。さらに、50%の高みに向け挑戦を続けていく。」という一層厳しい目標を掲げました。
この目標に対して日本がどれくらい達成できているかというと、2020年の段階で-18.4%(2013年度比)。あと10年で27.6%削減しなくてはならないというのは大変大きな課題ではありますが、2013年の温室効果ガス排出量を100としたとき、5年連続で削減できたのはG7の中で日本とイギリスのみ。着実に削減できているという見方もできます。
※全国地球温暖化防止活動推進センター「日本の1990-2020年度の温室効果ガス排出量データ」(2022.4.19発表)
世界の脱炭素の取り組みと掲げている目標
アメリカの脱炭素の取り組みと掲げている目標
アメリカは2015年、オバマ政権時代にパリ協定に合意しました。その後2019年にトランプ政権で一度パリ協定から撤退します。ところが一転して2021年、バイデン大統領が就任後ただちにパリ協定への復帰を宣言。気候変動問題を政府の最優先課題のひとつとして位置づけ、2030年までに温室効果ガスを50~52%削減(2005年比)するという意欲的な目標を掲げました。さらに2035年までに電力部門の脱炭素化を目指すことを表明しています。アメリカは世界に占めるCO2排出量では第2位(2018年)を占めており、大きな影響力を持つとして世界から動向が注目されています。
カナダの脱炭素の取り組みと掲げている目標
カナダは2021年に2030年までに温室効果ガスの排出量を40~45%削減(2005年比)するという目標を提示しています。また、長期目標としては2050年にカーボンニュートラルを達成するという目標も掲げています。
カナダは使用電力に対する再生可能エネルギーの比率が世界各国と比較して圧倒的に高く、2019年度で66.3%という驚異的な数字を誇っています。(2019年時点で40%以上を達成しているのはカナダのみ)このうちほとんどが水力発電によるもので、ナイアガラの滝をはじめとした豊富な水力資源と起伏の多い地形を生かした発電技術を発達させています。
イギリスの脱炭素の取り組みと掲げている目標
イギリスは最新の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)の開催国です。そのCOP26に先駆けて、「2030年までに温室効果ガスの排出量を68%削減する(1990年度を基準として)」という目標を提示し、各国に意欲的な目標設定を呼びかけました。2020年には、ボリス・ジョンソン首相が「グリーン産業革命」を発表。クリーンエネルギー、輸送、自然、などについて野心的な10項目の計画を掲げています。この中には2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する方針も含まれており、国家間の脱炭素競争でもリーダーシップを発揮しています。イギリスは先進国の中でも「2050年までに温室効果ガスの純排出をゼロにする」ということを法制化した初めての国で、常に脱炭素各国のトップ集団を走り続けています。
ドイツの脱炭素の取り組みと掲げている目標
ドイツはEU加盟国ですが、EUとしての目標とは別に自国としての目標も掲げています。2021年には、2030年までに温室効果ガスの排出量を65%削減するという目標を提示しています(1990年度基準比)。カーボンニュートラルに関しては他国よりも早い2045年での達成を目指しています。(ガソリン車の廃止については2030年)ドイツの特殊な事情としては「脱原発」があります。ドイツは2011年の東日本大震災を受けて、それまでのエネルギー政策を大幅に転換して全ての原発を2022年までに廃止する法律を可決させました。それにより再生可能エネルギー発電への転換が急速に進み、現在では周辺各国に電力を輸出するまでの自然エネルギー大国となっています。この背景としては、風力発電と太陽光発電を大量に導入したことが挙げられますが、いずれにしろ、高い理想と決意を持って、国民が一丸となり自然エネルギーを導入してきた結果と言えるでしょう。ドイツは2035年以降、ほぼ全ての国内電力を自然エネルギーによって賄うと言われており(「再生可能エネルギー法」)、周辺国に頼らない独自の脱炭素への歩みを実現しています。
フランスの脱炭素の取り組みと掲げている目標
そもそもフランスはエネルギー資源に乏しく、その点では日本と共通した事情を有しています。1973年のオイルショックを契機に原子力発電の導入が進められ、多い時では電力供給の8割を原子力で賄っている状況でした。そんな原子力大国フランスがパリ協定に先駆けて「原子力抑制&自然エネルギーへの転換」を謳う法律を成立させたことは、パリ協定(COP21)の議長国として大変大きな主体性を発揮しました。
その法律とは2015年に施行された「エネルギー転換法」のことです。原子力大国であったフランスの原子力発電割合を大幅削減し、かわりに再生可能エネルギー発電割合を大幅に引き上げるという内容で、脱炭素を目指す世界各国に対してリーダーシップを示すものとなりました。温室効果ガスの削減目標としては、2030年までに40%削減、2050年までに75%削減(どちらも1990年比)を掲げており、ガソリン車の廃止については2040年までの実現を目指しています。
企業が脱炭素に取り組むメリットについて
企業が脱炭素に取り組む、「脱炭素経営」。脱炭素経営を行うことは、企業にとってメリットがあるのでしょうか?また、どのような方法で脱炭素経営を行っていけばいいのでしょうか?ここからは、脱炭素経営に取り組む企業の実例をご紹介していきたいと思います。
脱炭素取り組み企業の実例
株式会社村田製作所様
日本最大級のカーポート型太陽光発電パネルを導入された村田製作所様。会社のビジョンとして、独自の製品の供給とともに、文化の発展や持続可能な社会の実現にいかに貢献できるかを使命とされています。岡山県瀬戸内市に導入されたカーポート型ソーラーパネルについては、日照条件や社員様の声、採算性を充分に検討されたうえで導入をご決断されました。特に、地面からの反射光を利用した両面パネルを採用することで面積効率が格段にアップ。コスト面でも妥協されることなく脱炭素への取り組みを実現されています。
山一電機株式会社様
大きな台風で事業停止を余儀なくされたご経験を活かし、非常時を含めた電力確保と真剣に向き合われた結果、NAS電池の導入をご決断されました。有事の際の電力確保、通常時を含めた運用方法、発電量の予測について詳細なシミュレーションを重ねられた結果、NAS電池と太陽光発電を組み合わせることで、充分に対応可能であることをご確信いただき、導入に至りました。BCP(事業継続計画…災害などへのリスク管理計画)と脱炭素を両立した先進的な取り組みを着実に実行され、加えて電力コストの高騰対策にまで繋げられましたことは、脱炭素経営が持続可能な社会を作り上げる、未来のための必要な選択であることを体現するものとなりました。
株式会社三福様
2021年に開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)でも、脱炭素化の重要なセクターであると注目を集めた自動車業界。そんな自動車業界で日々、コストカットと向き合っていた三福様は、コスト削減の大きな要因である「電力」を見直そうと、太陽光発電システムの導入をご決断されました。
きっかけは、夏のエアコン稼働を減らすため工場の屋根に遮熱塗装の導入を検討されたこと。その過程で、遮熱効果があってさらに発電もできる太陽光パネルを載せれば一石二鳥だと導入を固められました。導入後、工場の室内温度が3℃低下。製造原価の低減・CO2削減・社員を熱中症から守る安全面の向上という、理想的な成果を得られました。
オムロン株式会社
オムロンは、「自己託送」方式による送電を開始しました。自己託送とは、発電した電力を送配電ネットワークを介して遠隔地にある自社工場や事業所などに送電して使用する電力供給システムです。オムロン フィールドエンジニアリング株式会社が京都府宮津市内に建設した太陽光発電所で発電した電力を、約100km離れた自社事業所に送電、供給しています。
オムロンでは、2018年7月に温室効果ガス排出量ゼロを目指す「オムロンカーボンゼロ」を設定。「省エネ・創エネの拡大」と「国内全76拠点のカーボンゼロの実現」に向けて取り組みを進めております。また、これらの取り組みから得られたノウハウや経験を積極的に他社に展開し、一丸となって社会問題の解決に繋げてまいります。
企業が取り組む脱炭素の方法
太陽光発電の導入
太陽光発電は電力を自社で供給できるという点で有効な脱炭素経営の手法です。工場や事業所の屋根や駐車場、空きスペースに太陽光発電パネルを設置することで電力を供給できます。屋根の上に設置するなど設置の方法を工夫することで太陽光による熱を遮断しながら発電もできるため、省エネと電力需給の一石二鳥を実現することもできます。また、災害の非常電源としても担保できるため、リスクマネジメントにもつながります。
省エネの推進
製造業など大きな電力を消費する企業にとって省エネは原価に直結する課題です。現在、日本は火力発電が電源(電気を作る方法)構成の7割以上を占めているので、電気の使用料を減らすことはCO2の削減にもつながります。産業界のエネルギー消費は現在でも最終エネルギー消費全体の4割ほどを占めているので、更にエネルギー効率を高めていくことが期待されています。
良く知られている電気代の削減方法としては、照明をLED電球にする方法が挙げられます。白熱電球(消費電力54W)に比べて、LED電球(消費電力9W)を使用すると消費電力を83%もカットすることができるので、LED照明の採用は非常に効果的です。工場などでは、旧型の設備を最新の省エネ型設備に更新する方法も採用されています。補助金を活用しながら初期投資額を圧縮し、さらにエネルギーコストの削減にまでつなげていけば、早期にエネルギー効率の良い電力供給を実現できます。
さらなる企業の省エネ方法としては、ピークカットやピークシフトによる契約電力の削減も効果的です。ピークシフトは、生産活動を昼間から夜間に移すなど省エネ努力をしたうえで、場合によっては電力消費の少ない時間帯に蓄電し、消費量の多い時間帯にシフトする(ずらす)ことです。夜間など、電力消費の少ない時間帯は単価も低いためコスト面から言うとお得な電気です。この時間に電気をとっておき、消費電力の多い時間帯へ補填することで、効率的に電気を使用します。
ピークカットは電力消費の多い時間帯の電力をカットすることです。電力は使用する人が多い時間が最も単価が高くなりますので、この時間帯の使用電力をカットし、どうしても必要な分は太陽光発電などで補うなどすると、コスト面からみても大幅な省エネにつながります。デマンド監視装置(デマンドコントローラー)を設置し、電力の使用状況電力(最大需要電力や使用電力量)を把握しながら電力効率を良くしていくことは、非常にインパクトの大きい省エネになります。
日本は省エネの分野では世界でもトップクラスの実績を誇っており、その技術と細やかなコントロール力は世界からも高い評価を得ています。
出典:資源エネルギー庁ウェブサイト
出典:経済産業庁「LED照明産業を取り巻く現状」
低炭素車の購入
運輸業や旅行業などに限らず、車を保有している会社は多いですが、低炭素車を購入することで脱炭素化に貢献することも可能です。電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HV)を利用することで走行時の温室効果ガスの排出削減をすることができます。パリ協定以降、ガソリン車やディーゼル車の新車販売は世界中で禁止の方針が取られているので、低炭素車への流れは自然なものとなっていくでしょう。
ただ、EV車は生産時にはガソリン車の2倍の温室効果ガスを排出するとも言われており、製造時の排出量については今後も注視が必要です。
再エネ電力の購入
企業が脱炭素に取り組む方法として、再生可能エネルギーを購入するという方法があります。再生可能エネルギーとは「太陽光発電および太陽熱発電」「風力発電」「水力発電」「バイオマス発電およびバイオガス発電」「地熱発電」などです。
再エネ電力を購入するには、小売電気事業者が提供する再エネ電気プランを選ぶ必要があります。再エネ電気プランを選ぶと、再生可能エネルギー由来の電気に切り替えることができます。各社の提供する電気の供給源には火力発電も含まれることがありますが、非化石証書を付与することで実質ゼロにしている場合もあります。構成比率などに関してはプランをよく確認の上ご契約ください。
トラッキング付き非化石証書を購入した電力会社を利用
再生可能エネルギーなどの「化石燃料から作られていないエネルギー」には、CO2を排出していないなどの環境価値が認められます。この電気の環境価値を認める証書が非化石証書です。通常、電力プランを提供する電力会社は電気市場から電気を購入する際に「再生可能エネルギーを50%欲しい」などと指定することができません。その代わり、供給時に非化石証書を購入することで、自社の電気の何割かを「この電力プランは再生可能エネルギー由来です」と謳えるようになりました。これにより、企業が電力プランを選ぶ際に再生可能エネルギーを選択することが可能になりました。
カーボンオフセット
カーボンオフセットとは、企業や人々が温室効果ガスの削減について努力したうえで、それでも排出せざるを得ない温室効果ガスの量を把握し、太陽光発電や、風力発電、植林活動など温室効果ガスの削減や吸収を助ける「プロジェクト」に投資する(クレジットを購入する)などして埋め合わせを行うことです。カーボンニュートラルは温室効果ガスの排出量を実質ゼロの状態にすることを指しますが、カーボンオフセットはカーボンニュートラルを実現するための具体的な手段のひとつです。個人や企業が排出削減・吸収のためのプロジェクトに投資し、「クレジット」を購入することで、間接的に温室効果ガスの削減・排出活動に参加することになります。
環境省はカーボン・オフセットに用いる温室効果ガスの排出削減量・吸収量を、信頼性のあるものとするため、国内の排出削減活動や森林整備によって生じた排出削減・吸収量を認証する「オフセット・クレジット(J-VER)制度」を2008年11月に創設し、2013年度からは、J-VER制度及び国内クレジット制度が発展的に統合したJ-クレジット制度をスタートさせています。
まとめ
今回は、脱炭素に向けた企業の具体的な取り組みをご紹介しました。世界的な脱炭素に向けた取り組みが企業に浸透している一方で、企業がコストカットやリスクマネジメントを真剣に考えた結果、脱炭素にたどり着いた例もあります。それだけ、脱炭素は持続可能な経営計画と密接なかかわりがあるということが言えます。
今後も、脱炭素に関する具体的な情報をお伝えしてまいります。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。