太陽光発電に蓄電池は必要?
企業用の太陽光発電システムの詳細な仕組みや事例を紹介!
企業用の太陽光発電システムについて解説!
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太陽光発電(企業・産業用)の仕組みとは
再生可能エネルギーの導入が進むにつれ、太陽光発電はかなり身近なものとなりました。しかし、太陽光発電の仕組みまでしっかりと理解しているという方はそんなに多くいらっしゃらないかもしれません。今回は太陽光発電の仕組みを、機器の名称や構造とともにわかりやすく解説していきたいと思います。
太陽光発電とは?太陽光を電気にする仕組み
太陽光発電は2種類の半導体を用いた発電方法です。半導体というのは、温度など一定の条件が揃うと電気を通す性質のある物質のことです。
太陽光発電に使用されているソーラーパネルには、2種類の半導体が張り合わされています。「N型半導体」と「P型半導体」です。
ソーラーパネルに太陽光が当たると、「N型半導体」には動きの活発な「伝導電子」が集まります。逆に「P型半導体」には伝導電子が集まりにくく、電子が足りない状態「正孔(せいこう)」が生まれます。この2つが接合すると、伝導電子が正孔へと逃げ出して電気の流れが生まれます。これが太陽光発電の基本的な仕組みです。
太陽光の「光エネルギー」を「電気エネルギー」に変換し、それを取り出して電力として利用するのが太陽光発電の目的です。
太陽光の「光エネルギー」が太陽光発電システムによって「電気エネルギー」に変換されますが、それを実際に電力として利用するまでには様々な周辺機器が必要となります。ここから先は具体的に周辺機器の役割をご説明しながら、太陽光が実際に電力として利用される流れを見ていきましょう。
太陽電池モジュール(セル・モジュール・ストリング・アレイ)
太陽光発電パネルのことを、「太陽電池モジュール」と呼ぶことがあります。基本的には同じものを指しています。
独立して機能できるひとつの単位を「モジュール」ということがありますが、太陽光発電の場合、ひとつのパネルで独立した機能を果たすため、「太陽電池モジュール」という言い方をします。一方で、太陽電池モジュールの中の一区画を「セル」と呼び、セルはそれ以下には分解できません。また、セルだけではわずかな電力しか生み出すことができず、太陽光発電としての充分な機能を得ることはできません。
そのため、太陽光発電として機能する最小単位として「太陽電池モジュール」が共通言語となっているのです。
セルを複数組み合わせたものがモジュール、モジュールを複数接続し、直列回路にしたものがストリングです。
さらに、ストリングを複数、並列に接続した回路をアレイと呼びます。
大きさの関係性は以下の通りです。
アレイ>ストリング>モジュール>セル
一般的にはアレイの容量が大きければ大きいほど太陽光発電の能力が高いということになります。
電池架台
太陽光発電のソーラーパネルを設置する台を「架台(かだい・がだい)」と呼びます。ステンレス・スチール・アルミなどで作られます。
太陽光発電システムは大きく薄い形状をしているため風や積雪の影響をうけやすくなります。風に飛ばされたり雪の重みで潰れたりしないよう、角度や基礎施工には慎重な検討が求められます。
集電箱(接続箱)
集電箱というのは、太陽光パネルとパワーコンディショナーの接続部にある機器を指します。太陽光発電で得た電力を取りまとめ、パワーコンディショナーに送る役割を果たしています。
一般的な大規模太陽光発電システムでは、集電箱の前段階に接続箱という小規模な電気の集約機器があり、接続箱で束ねられた電力をさらに集電箱で束ねてパワーコンディショナーに送ります。(システム構成によりこれとは異なる場合もあります)
家庭用の太陽光発電システムなどでは接続箱のみが使用されるケースが多くなります。
パワーコンディショナー(PCS)
パワーコンディショナーは、太陽光発電で発電した「直流電力」を、「交流電力」に変換する機器です。電気には直流電力と交流電力があります。直流電力というのは電気の流れる向きや大きさ、勢いが変わらない電力のことです。
交流電力というのは一定の周期で電気の流れる向きや大きさ、勢いが変化する電力のことです。まるで波を打つように電気の向きが変化しながら流れます。普段私たちが利用しているコンセントの電気は交流電力です。コンセントにはプラスやマイナスのような向きがなく、プラグの向きを逆にしても電気が流れます。
なぜ家庭用の電気として交流電力が使用されているかというと、交流電力は変圧器によって自由に電圧を変換できるからです。電力は高圧になればなるほど一度に大量の電力を遠くまで運ぶことができます。しかし高圧のままでは家庭用の電力としては危険なため、変電所を介して家庭で使用できるレベルにまで電圧を下げています。このようなインフラ整備の面から、交流電力は送電に適しているというわけです。
一方で直流電力にもメリットはあります。直流は蓄電が可能ですし、電力が安定しているため様々な電気製品に使いやすいというメリットがあります。交流電力は変圧が可能ですが見方を変えると電力が安定しないということです。そのため例えば100Vを取るためには100Vより高い電圧を流して平均値をとる必要があります。つまりロスが発生するということです。また、デリケートな機械になると、不安定な交流電力の使用が故障にもつながります。そこで精密機械においては、ACアダプターを用いるなどして交流電力を再び直流電力に戻し、電圧を整えてから電気を流すということが行われています。
少し話がそれましたが、太陽光発電で発電した直流電力を交流電力に変換する、これがパワーコンディショナーの役割です。
パワーコンディショナーの内部は、電力変換を行うインバータと、ブレーカーなど異常を検知した時に電気を遮断する保護装置から構成されています。インバータは半導体のスイッチ(FETなど)を使用して直流の電圧を細切れにし、流す向きを変化させることによって交流電源を作り出しています。
分電盤
分電盤は電気を分配する装置です。ブレーカーとも呼ばれています。単に電気を分配するだけではなく、使いすぎや漏電をチェックする役割も果たしています。
特に過電流や漏電など、火災にもつながる危険な電気の流れを察知した際は電気の流れを遮断(ブレーク)する役割があります。
また、一定以上の電気が流れると自動的に電気が切れる仕組み(アンペアブレーカー)も有しています。
太陽光発電において分電盤は特に重要な役割を果たしています。そのひとつが「逆潮流(ぎゃくちょうりゅう)」です。逆潮流とは、作った電気を売るために電力会社へ送る機能です。これがない場合は、せっかく太陽光発電で電力を作っても売電することができません。
分電盤は電圧を調節することで電気の流れを作り出し、目的に沿って電気を分配したり遮断したりしています。
買電用・売電用受変電設備(キュービクル)
キュービクルというのは、正式名称を「高圧受電設備」と言います。電力会社の電気系統から高圧の電気を受け取り、それを工場や企業で使うことのできる低電圧の電気に変圧する装置です。電気は高圧のところから低圧のところに流れますので、これがあることで電気を引き込むことができます。
買電用受変電設備というのは、上記のような電気系統から需要家への電力変換を行う装置です。
売電用受変電設備というのはこれの逆で、作った電気を電力会社に売るために一時的に高圧な電気を作り出す(逆潮流を作る)装置のことをいいます。
高圧な電気を作り出すことで、太陽光発電システムを持つ企業や家庭から電力会社に電気を送り出すことができるようになります。
積算電力量計
積算電力量計は電力会社からの売電量を測定するための計量機器です。買電用と売電用がありますが、売電用積算電力(売電メーター)は太陽光発電で発電した電力を売電する際に売電量を測定するための計器で、これは需要家側で費用を負担しなくてはならない場合があります(電力会社によって異なる)。また、売電の際の契約によって機器が異なることもあるため、注意が必要です。
PAS(気中負荷開閉器)
PASは気中負荷開閉器とも呼ばれる装置で、電力会社と需要家の責任分界点に設置される保護装置のことです。仮に需要家において電気事故が発生した場合に、近隣への波及事故などを防ぐ役割があります。
太陽光発電に利用される蓄電池の仕組みとは?
蓄電池とは?
蓄電池は太陽光発電などで発電した電力を保存しておくことのできる装置です。充電した電気は必要なときに出力することができます。災害時など、電力会社の電気系統が停電した時にも電気を供給できるため、病院や工場、公共施設などさまざまな施設で導入が進んでいます。
蓄電池の仕組み
蓄電池は、硫酸などの電解液に、マイナス極とプラス極になる金属を入れて作られています。
マイナス極の金属は電解液に溶けやすい金属です。マイナス極の金属が電解液に触れると、化学反応が起きて電子が放出され放電が起きます。放電された電子をエネルギーとして利用したものが電池です。ここまでは乾電池の仕組みと同じです。
蓄電池の場合は負荷をかけて電流を逆向きに流すことで、電気を溜めることができます。電子が蓄電池内部に到達すると、溶け出していた金属が元に戻り、プラス極もマイナス極も放電前の状態に復元されていきます。そのため充電完了後は再び電池として使うことができます。これが蓄電池の仕組みです。
太陽光発電と蓄電池を利用した企業の事例
事例①:山一電機株式会社様
千葉県佐倉市で半導体の検査用ICソケットなどを製造しておられる山一電機様。2019年に千葉県を襲った大型の台風により停電が発生し3日間の事業停止を余儀なくされました。非常時の電源確保策を主とするBCP対策として、太陽光発電にNAS電池を組み合わせた蓄電システムを導入されました。
最終的には有事だけでなく通常時から太陽光発電を自家消費する形で活用され、リスクマネジメント面だけでなく、省エネや脱炭素、ESGという観点からも効果の高い導入事例となりました。
動画でよりわかりやすく事例をご紹介しております。
事例②:宮城建設株式会社様
岩手県久慈市においてインフラ整備事業を数多く手がけていらっしゃる宮城建設様。東日本大震災の経験を機にBCP対策を進められる中で、太陽光発電、蓄電池、EV充電機という複合型電源システムを導入されました。
それまで導入されていたディーゼルエンジン非常用発電機と比較して強固で盤石な非常用体制を構築できたとともに、地元の住民や取引先の方々が発電量を確認できるモニターを設置することで社会貢献の一環としても効果が大きかったとのお声をいただきました。
事例③:オムロン株式会社
オムロン株式会社は、2023年1月より自社事業所の京阪奈イノベーションセンタに対して、敷地外のオムロン宮津太陽光発電所から自己託送方式による送電を開始しました。自己託送システムでは太陽光発電システムに加え大容量蓄電池を使用しています。大容量蓄電池として使用しているのは日本ガイシ株式会社様のNAS電池です。
このシステムによって電力の安定供給と需給調整を実現しています。
まとめ:太陽光発電と蓄電池を上手く組み合わせましょう
太陽光発電と蓄電池を上手く組み合わせることによって、電力をより安全に、賢く使うことができます。今後ますます再生可能エネルギーが必要とされる中、太陽光発電や蓄電池そのものへの理解が必要となってくると思います。そんなときにこの記事がお役に立てば幸いです。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。