【最新版】太陽光発電の発電効率・変換効率とは?
計算方法や効率低下の原因、高める方法を徹底解説!
今さら聞けない、発電効率と変換効率
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太陽光発電の「発電効率」と「変換効率」とは?
脱炭素社会の実現や脱炭素経営に向けて注目が集まる再エネや太陽光発電。しかし、導入を検討する企業にとって気になるのは「本当に効率よく発電できるのか?」という点ではないでしょうか。本記事では、太陽光発電の発電効率と変換効率の違いをわかりやすく解説。効率が低下する原因や、その改善方法、導入事例から得られた経済メリットまで、最新情報をもとに徹底解説します。コスト削減やBCP、脱炭素経営を目指す企業の皆さまには必見の記事です。
発電効率とは?
太陽光発電の「発電効率」とは、「太陽光パネルに当たった太陽エネルギーのうち、どれだけの量を実際に電気として利用できたか(実績値)」を示す割合です。
たとえば、太陽から1,000kWhのエネルギーが降り注いだと仮定して、パネルが200kWhの電力を発電できていれば、発電効率は20%だったということになります。
発電効率は、太陽光パネル自体の性能だけでなく、日射量(季節・天候)や設置条件(角度・方角・影・汚れ)など外部環境の影響を受けます。そのため、次の章でご説明する「変換効率(パネルの性能値)」とは異なる実行効率(実際にどれだけ発電できたか?を測る数値)として評価されます。
変換効率とは?
太陽光発電の「変換効率」とは、「太陽光パネルに当たった太陽エネルギーのうち、どれだけのエネルギーを電気に変換できうるか(パネル単体の性能)」を示す割合です。
変換効率は工場などで測定された「理想条件下」での数値となり、太陽光パネルの性能やスペックを比較したいときに用いることが多い数値です。
変換効率は以下の式で表されます。
変換効率(%)= パネルの定格出力(W)÷(パネル面積(㎡)× 1,000W/㎡)× 100
例えば、出力400Wの太陽光パネルで面積が2㎡の場合、変換効率は
変換効率 = 400 ÷(2 × 1,000)× 100=400 ÷ 2,000 × 100 = 20%
となります。この割合が高いほど(同じ面積でも)より多く発電できることになります。
ただし、変換効率が高ければその分だけ価格も高くなる傾向があるため、導入時には検討が必要です。また設置条件によっては発電効率が落ち、変換効率の低いパネルと差が出ないこともあります。設置条件と変換効率のバランスを考慮しながら、コストパフォーマンスの良い製品を選ぶことが大切です。
発電効率と変換効率の違い
発電効率と変換効率の違いを一言でいうと、発電効率は「実際の発電実績値」であり、変換効率は「パネルのスペック(理想値)」です。
たとえ変換効率が高かったとしても、日照量や汚れなどの環境条件によっては発電効率が落ちることもあります。変換効率の良い太陽光パネルを選択するだけでなく、実際の設置条件まで精査したうえでご検討ください。
「そうはいっても一年の天候データもないし、どんな環境要因を考慮すべきかもわからない」という場合は、迷わずプロに頼むことが大切です。その際も、なるべく設置実績のある会社を選択することで、思わぬリスクを防ぐことができます。
太陽光パネルの種類と変換効率
2025年現在、日本国内で主流となっている太陽光パネルは単結晶シリコン系のものです。特にN型セルを採用した高効率パネルが注目されています。N型はシリコンにリンを添加して作られたセルを利用しており、効率と耐久性の両方に優れるため、初期コストは高くても長期的には採算がとれると考えられています。
世界的に見ても、今後はN型セルが主流になると見込まれています。
カテゴリ | 種類 | 特徴・備考 | 変換効率(目安) |
---|---|---|---|
シリコン系 | 結晶シリコン(単結晶・多結晶) | 最も普及、長期信頼性、単結晶は高効率 | 約15〜23% |
シリコン系 | アモルファスシリコン | 室内発電に強いが、長時間で効率低下しやすい | 約6〜10% |
シリコン系 | ヘテロ接合(HJT) | 結晶+アモルファスの複合、高効率で高温にも強い | 約17〜24% |
化合物系 | III-V族多接合 | 宇宙用、集光で40%以上の超高効率、コスト高 | 約35〜40%(集光時) |
化合物系 | CIGS系 | 省資源、銅・インジウム・ガリウム・セレンの化合物 | 約11〜12% |
化合物系 | CdTe | カドミウム使用で日本では未普及、欧米では導入あり | 約10% |
有機系 | 色素増感 | 製造簡単、色付き、寿命と効率が課題 | 約7〜8% |
有機系 | ペロブスカイト | 塗布可能、軽量・柔軟、次世代型として注目 | 約15〜28%(開発中) |
有機系 | 有機半導体 | 塗布で作れる、玩具などに使用、効率と耐久性は課題 | 約15% |
量子ドット系 | 量子ドット | 研究段階、量子効果による新しい発電方式 | 開発中(未確定) |
発電効率低下の原因とは?
太陽光発電は長期にわたって安定した電力を得られることが魅力ですが、さまざまな物理的要因・環境的要因によって発電効率が低下することがあります。
ここでは、太陽電池モジュールやシステム全体の性能を低下させてしまう主な原因について解説していきます。
季節や天候などの環境要因
太陽光発電は日射量に大きく依存します。特に季節や天候は発電効率に大きな影響を及ぼすため、冬場、梅雨、台風の季節などは注意が必要です。
また、春の黄砂は太陽光を遮るだけでなく、太陽光パネル全体に付着することで発電効率が下がる場合があります。発電そのものの効率低下だけでなく、清掃コストや修繕費用がかかることもあり、事前に想定や対策をする必要があります。
気温が高くなりすぎる
意外だと思われるかもしれませんが、日射量の高い真夏は気温が高くなりすぎることによってかえって太陽光パネルの出力が低下してしまいます。
高温になるとパネル内部の抵抗(電気の流れが悪くなること)が増えることによって発電効率が下がります。ちょうど、パソコンやスマートフォンが熱くなると動作が遅くなる状態に近いです。特に真夏の直射日光が長時間当たる環境下では、通気性の確保や冷却対策が必要です。
ちなみに、気温が低い場合においては、日射量が十分であればさほど発電には影響がありません(極端に低い場合は蓄電池のパフォーマンスに影響が出るため注意が必要)。ただ、積雪のある地方は太陽光パネルを雪や氷が覆うことによって発電効率が下がるため、対策が必要です。
太陽光発電においては、晴れていて、なおかつ気温が高すぎない日が発電効率が高くなります。
影や汚れ、劣化
太陽光エネルギーを遮る影や汚れは大敵です。パネルの一部にでも影がかかると、影の分だけ効率が落ちるわけではなく、システム全体の発電効率に影響が出ることがあります。これは、太陽光パネルがセルを直列につないで発電しているためです。直列接続の場合、電池を複数つないで発電しているようなイメージのため、途中に電気の流れにくい箇所があると全体が流れにくくなります。
砂埃や鳥の糞などの汚れや経年劣化によっても発電性能は低下します。定期的な清掃や点検、メンテナンスは太陽光発電においては不可欠であり、メンテナンスサポートを含めた運用を検討することが大切です。
パワーコンディショナーのロス
太陽光パネルで発電された電力は、パワーコンディショナーという機器によって直流から交流へと変換されます。この変換過程でもエネルギーのロスが発生します。
変換効率は機器によって異なりますが、機器が古かったり低品質であったりすると10%以上のロスが出ることもあります。
発電量最大化を考慮した設計になっていない
太陽光パネルは最大限の日射量を受けられるように設置することが大切です。特に方角や設置角度については十分に考慮する必要があります。一般的に日本国内では南向きに設置し、地域ごとに最適な傾斜角(緯度に近い角度)を保つのが理想です。傾斜角が保てない場合は、可動式の架台や両面パネルの導入なども選択肢になります。オムロン フィールドエンジニアリングによる株式会社村田製作所様の事例では、両面パネルを利用して発電効率を高めた日本最大級のカーポート型太陽光発電システムの導入実績があります。この事例では採算効率を重視したうえであえて初期投資額の大きいカーポート型両面パネルをご提案し、ご採用をいただきました。
太陽光発電の発電効率を高める方法
企業や工場においても再生可能エネルギーの導入は加速しており、ソーラーパネルや蓄電池の採用が増えています。特に工業用の大規模設備では、モジュールの性能や保証、運用方法について事前に確認することが重要です。屋根や建物の構成、設置場所によって発電効率は変化するため、日射条件や技術的なシミュレーションによる見極めも必要となります。
最新技術を取り入れたシステムを使用し、エネルギーを「見える化」する
近年の太陽光発電システムでは、AIやIoT(モノのインターネット化)を活用した「エネルギーの見える化」が可能になっています。現状使われているエネルギーを可視化することで、必要な量や節約すべき量を割り出し、目標を設定することができます。
脱炭素化へのロードマップを設定することで、スムーズな節電アクションへとつなげることができます。また、故障や汚れによる出力低下にも迅速に気付くことができ、早期の対応で電力ロスを最低限に抑えることができます。
発電システムの適切な設置
前章でご説明した通り、太陽光発電の発電効率を最大限に引き出すためには初期設置段階からの最適な設計と施工が不可欠です。
方角・角度・遮蔽物の有無などを計算し、長期間にわたって安定した発電ができるよう計画します。これらを正確に予測するためには、長期間に及ぶ天候や大気現象などのデータと施工についての経験値が必要です。
発電状況を24時間監視
安定した発電効率を継続して保つためには、発電状況をリアルタイムで監視するシステムが必要です。常時のモニタリングシステムがあれば、仮に異常値が検出された場合にもいち早く状況を把握して対応することができますし、天候や電力の使用状況を予測して効率的な電力運用を行うことができます。
人間であればうっかり見過ごしてしまいそうなわずかな変化も、モニタリングを行うことで自動運用が可能となり、電気料金のコストカットにもつながるような効率的な発電を行うことができます。
オムロン フィールドエンジニアリングのSmart-EMSクラウド
オムロン フィールドエンジニアリングのSmart-EMSクラウドは、EMS(エネルギーマネジメントシステム)と蓄電池を活用し、省エネ・発電・蓄電など、お客様のご要望に合わせたモードで最適な電力運用を行います。
例えば、独自の需要予測、発電予測からピークカットや自家消費量のコントロールを行い、電気代の削減を行いながら災害などによる停電時のBCP対策にも備えます。
市場取引や遠隔モニタリングへの対応も可能。
単に再エネ電力をコントロールするというだけでなく、経済的なマネジメントへのご要望にもお応えできるシステムです。
脱炭素経営の成功事例
電気料金の上昇やエネルギーコスト削減への期待から、再エネ設備の導入は加速しています。特に太陽光発電はバイオマス発電や風力発電と比較して導入のしやすさで検討される方が多い再エネ設備です。信頼できるメーカーを選び、資料やランキング、相談サービスなどを活用することで、より安心で効果的な導入が可能となります。
太陽光発電以外にも、高効率設備への更新や熱エネルギーの再利用によっても工場のエネルギー効率を高めることが可能です。この章では、エネルギー効率を高めるための具体的なアクションについて解説していきます。
高効率設備への更新
老朽化した設備や低効率な機械を使い続けてしまうことで、余分な電力や熱エネルギーを消費し続けてしまいます。これらをLED照明やインバーター制御付きの空調やポンプ、高効率モーター、断熱性に優れたボイラーなどに更新することで、消費エネルギーのロスを減らすことが可能になります。特にモーターやコンプレッサーなど電力消費量が多い機器の場合、最新型に置き換えるだけで、10~30%の省エネが可能になるケースもあります。
更新時期が近付いている場合は、積極的に高効率設備の導入をご検討いただくのがおすすめです。
熱エネルギーの再利用(コージェネレーション)
「コージェネレーション(熱電併給)」とは、発電時に発生する熱を有効活用する仕組みのことです。通常の発電では捨てられてしまう排熱を給湯や冷暖房に再利用することで、エネルギーの利用効率を大幅にアップさせます。
工場では主に、ガスエンジン・ガスタービン・燃料電池などのコージェネ設備を導入することで全体のエネルギー利用率を70%~80%まで引き上げることができます。
これらは脱炭素経営という観点からも非常に有用で実効性の高い取り組みのひとつです。
空調・換気の最適化
空調設備は、工場のエネルギー使用量の中でも非常に大きな割合を占めています。以下のような対策をすることで、効果的に空調エネルギーのロスカットをすることができます。
・室内外の温度差を最小限に保つよう自動制御システムを導入する
・ゾーニングをすることで冷暖房のムダを防ぐ
・排気・吸気のタイミングやバランスを整えることで換気エネルギーを削減
・高性能フィルターや断熱材の導入
特に、IoTを活用した空調の集中制御やAIによる自動調整は、省エネと快適性の両立に寄与します。
作業プロセスの見直し・改善(カイゼン活動)
日本の製造業の考え方として今や国際的に定着した「カイゼン活動(改善活動)」ですが、このカイゼン活動は現場の作業手順の効率化や省エネにも最適です。
例えば…
・機械のアイドリング時間の短縮
・使っていない設備の自動停止
・スタッフの移動距離や作業時間の削減
・エネルギー使用量の可視化による意識改革
など、現場レベルで様々なカイゼン活動がなされています。
設備・システム・人の動きにおけるすべてのボトルネックに対して総合的にアプローチすることで生産ライン全体の効率化を図ることが可能になります。現場の意見をベースに、既存のリソースでムダを減らしながら安定的な効率化を図ることができる点では、カイゼン活動は最強の省エネとも言えます。
これらは日本の企業風土が生み出した創意工夫の精神であり、「ものづくり」への情熱と探求心の象徴です。
こんなに違う!太陽光発電を導入された企業様が実感された経済メリット
電気代を年間2000万円削減! | 山一電機株式会社様の事例
山一電機株式会社様は、台風による操業停止の経験をきっかけに、佐倉事業所へ太陽光発電とNAS電池を導入されました。これにより、災害時の電源確保というBCP対策を実現するとともに、自家消費型発電によって年間2,000万円の電気代削減を達成されています。蓄電池の活用でピークシフトにも対応でき、エネルギーコストの最適化を実感されています。脱炭素と経営効率の両立に成功された好事例です。
オカネツ工業株式会社様では、電気料金の高騰と空調による消費電力の増大に悩まされていたことから、自家消費型太陽光発電を導入されました。特に夏季のデマンド警報への対応として、電力ピークの緩和に貢献し、社員の作業環境改善にもつながりました。結果として、電気コストの削減と環境対策の両立を実感されており、持続可能な工場運営の一歩となっています。
脱炭素経営の成功事例
工場・病院・施設などにおいて現状どの程度のエネルギー消費、ファシリティの使い方がされているのかを確認し、CO₂排出余地がどのくらいあるのかをエネルギー管理士が診断する、オムロン フィールドエンジニアリングの「エネルギー診断」。省エネだけでなく、創エネ・蓄エネを総合的にミックスすることで、脱炭素経営・省コスト・BCP強化を総合的にサポートします。補助金活用や施工管理、保守対応も承ります。
提供ソリューションの一部をご紹介します。詳しくはオムロン フィールドエンジニアリングまでお問い合わせください。
【省エネ】空調・ボイラー・照明・圧縮機の効率化
工場の中で大きなエネルギー割合を占める空調やボイラーの更新を、データをもとに課題と目標を示しながらお手伝いします。
分類 | 改善例 |
---|---|
空調 | 変風量制御、外気導入制御、高効率空調への更新 |
ボイラー | ドレン回収、排熱回収、高効率ボイラー、断熱強化 |
照明 | LED更新、人感センサ付き照明 |
圧縮機 | 台数制御、高効率機器への更新 |
【創エネ・蓄エネ】太陽光・EV対応
脱炭素経営において飛躍的な役割を果たす太陽光発電やEV設備などの設置・運用サポートをいたします。
種別 | 内容 |
---|---|
太陽光発電 | 自家消費型、独立電源、CSR対応 |
EV設備 | EV充電器のインフラ構築支援 |
【運用支援】見える化・自動制御
コスト削減課題に対して数値的・実践的なアプローチをするためのエネルギーの見える化・自動制御についてお手伝いいたします。
項目 | 内容 |
---|---|
デマンド監視 | デマンド超過防止、制御連携可能 |
エネルギー計測 | 消費傾向の可視化、改善余地の発見 |
自動化・停止制御 | 不要機器の電源制御によるムダ排除 |
<参考リンク>
エネルギーソリューション | 社会の安心・安全・快適ソリューション | オムロン ソーシアルソリューションズ株式会社
エンジニアリングサービス|創エネ・蓄エネ・省エネの機器・ソリューションならオムロン
まとめ | 発電効率・変換効率を理解し、最適なシステム選択を
太陽光発電の導入にあたっては、「変換効率=パネルの性能」と「発電効率=実際の発電量」という2つの効率の違いを正しく理解することが重要です。
単にカタログ上の数字だけでなく、設置環境・季節・気象条件・影や汚れといった要因も含めた「実際の発電効率」に目を向けることで、より現実的で効果的な太陽光発電システムの選択が可能になります。
また、コージェネレーションや蓄電池との組み合わせ、IoTによる見える化・監視体制の整備など、発電・蓄電・消費の最適化を図る多面的なエネルギー対策を講じることが脱炭素経営やBCP対策にもつながります。
オムロン フィールドエンジニアリングは、エネルギーを「つくる・使う・最適化する」視点を持って、お客様の施設や事業に最も適したソリューションをご提案して参ります。
【執筆者情報】

脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。