太陽光発電PPAモデルとは?
仕組みのわかりやすい解説とメリットデメリット、導入のポイント
太陽光0円設置!PPAモデルとは?
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PPAモデルとは?いまさら聞けない仕組みを分かりやすく解説!
太陽光発電導入に際して、「PPAモデル」という言葉を耳にしたことがある方は少なくないかもしれません。PPAモデルは簡単に言うと、太陽光発電システムを設置する「場所」を提供する代わりに、太陽光発電システムの「無償設置」や「維持管理」を受けられる仕組みです。
そこで発電した「電力」に関しては、有償提供となります。(さらにわかりやすい説明を次章でしていきます。)
今回は、PPAモデルの概要からメリットやデメリット、導入事例をわかりやすくご紹介して参ります。
太陽光発電は高そうだし決断が難しい…と思われていた方も、PPAモデルであれば現実味を帯びてくるかもしれません。もしご興味がおありでしたら、こちらの記事をぜひお読みください。
PPAとは?海外と日本のPPAの違い
PPAとは、「Power Purchase Agreement」の略です。日本語では「電力購入契約」と訳されます。電力を売る側(供給家)と電力を買う側(需要家)が直接電気の売買契約を結ぶことを意味します。海外では再エネ由来の電力だけを指名購入するなどよりフレキシブルに電力の購入が可能となっていますが、日本では国土や法的な問題から海外のPPAとは少し異なります。次章では日本における「PPAモデル」について説明します。
PPAモデルとは?仕組みの解説
PPAモデルでは、PPA事業者が主に企業などの施設屋上や遊休地に太陽光発電システムを設置します。太陽光発電システムの設置費用はPPA事業者が負担します。企業などの施設所有者は場所を提供する代わりに、設置費用や維持管理・点検の提供を無償で受けることができます。
つまりPPAモデルは、企業から見ると初期費用ゼロ円で太陽光発電を設置できる大変画期的な仕組みです。
発電された電気に関しては、PPA事業者と施設所有者の間で料金契約を交わしたうえで提供を受けることが可能です。太陽光発電による電力料金が一般の電力会社の電力料金より安価となった場合は施設所有者にメリットが生まれます。今後は電気代の高騰が見込まれているうえに、環境貢献や災害対策用電源にもなることから、PPAモデルは工場や事業所など、施設の所有者にとってメリットの高い仕組みとして注目されています。
他のサービス(自己所有・リース)との違い
自己所有とPPAモデルの違い
メリット | デメリット | |
---|---|---|
自己所有 | ●発電した電気を無償で使用できる ●自社に所有権がある |
●設置費用が自社負担 ●メンテナンスや故障のリスクを負う |
PPA | ●初期費用ゼロで太陽光発電システムを導入できる ●メンテナンスや故障時の対応はPPA事業者が行う |
●電気の使用量に応じて電気料金を支払う ●契約期間中の所有権はPPA事業者 |
太陽光発電の自己所有とPPAモデルとの大きな違いは、設置費用です。PPAモデルは設置費用が無料なのに対して、自己所有は設置費用が必要となります。一方で、自己所有の大きなメリットは発電した電気を無償で使用できることです。PPAモデルは電気の使用量に応じて電気料金を支払う必要があります。
設置後の太陽光発電システムの所有権は自己所有の場合は設置した企業や団体側にありますから、メンテナンスや故障のリスクも負うこととなります。PPAモデルにおいては、契約期間中の所有権はPPA事業者側にあるため、メンテナンスや故障対応はPPA事業者が行います。契約期間が満了したのちは(契約内容によりますが)施設の所有者に所有権が移るケースが多いので、メンテナンスや撤去に要する費用は自己負担となります。
リースとPPAモデルの違い
メリット | デメリット | |
---|---|---|
リース | ●自家消費しなかった電気は売ることができる | ●設備の資産計上が必要 ●発電がない場合でもリース料金を払う必要がある |
PPA | ●設備の資産計上は必要ない ●必要な分だけの電気料金を支払えばよい |
●売電収入を得ることはできない |
リースもPPAモデルと同じく、初期費用ゼロで太陽光発電システムを導入することができます。
リースとPPAモデルの大きな違いは、PPAモデルが「電力購入」という形で料金を支払う(徴収する)のに対して、リースは「設備利用料」としてリース料金を支払う(徴収する)点です。
リースは需要家が設備を借りているわけですから、そこで発電した電気は自家消費として使うことができ、余った場合は売電することも可能です。PPAモデルは基本的には使用する分だけをPPA事業者から購入します。
一方で、デメリットとしてはリースは設備の資産計上が必要だという点です。資産を重くしたくない場合はPPAモデルがおすすめです。
PPAモデルのメリット
①初期費用がかからない
PPAモデルの最大のメリットは初期費用がかからない点です。太陽光発電システムの最大のハードルは初期設置費用であるケースが多いため、PPAモデルは太陽光発電システムの設置普及の後押しとなっています。
②電気代の負担を減らせる
一般電力が高騰している現在では、1kWhあたりの電気料金が変動するため将来の電気代の見通しが立ちません。将来は電気代がさらに高騰する可能性もあり、電力を多く使う工場や事業所では電力価格の高騰は死活問題です。
一方でPPAモデルの場合、契約内容にもよりますが1kWhあたりの電気代は固定である事が多く、契約期間中は変動しないため経営の見通しが立ちやすくなります。
電気代の負担軽減と安定した電力供給の維持は、経営には大きなメリットとなります。
<参考リンク>
【2023年最新】電気代高騰対策!太陽光発電を上手に利用するポイントとは? (chikuden-setsuden.com)
③非常用電源として活用できる
災害の多い日本では、地震や台風などで電力が使えなくなるという事態も想定しておかなくてはなりません。東日本大震災以降、企業の災害に対するレジリエンス強化意識はより一層高まりました。PPAモデル(オンサイトPPAモデル)は自社の敷地内に太陽光発電設備を設置するため、送配電網の途絶リスクが少なく、非常用電源としての活用が期待できます。また、被災した場合には周辺地域の電源も同時に途絶する可能性が高いため、太陽光発電を地域の非常用電源としても使用することができます。
④メンテナンスや修理の手間がかからない
PPAモデル契約中の太陽光発電設備の所有権はPPA事業者にあるため、メンテナンスや故障修理はPPA事業者が行います。初期設置費用だけでなく、ランニングコストも基本的にかかりません。太陽光発電を自己所有する場合、これらの費用がすべて自己負担となります。安定稼働には専門知識や技術が必要となりますので、企業としての負担は少なくありません。メンテナンスや修理の負担を軽くできるのはPPAモデルの大きなメリットです。
⑤RE100やSBTなど環境経営に貢献
PPAモデルに限らず、太陽光発電の大きな特徴のひとつが、脱炭素に貢献できるという点です。2050年のカーボンニュートラルに向けて、企業として業界として脱炭素に取り組む必要性が年々高まってきました。取り組みの目標値として、RE100やSBTなどを掲げる企業も増えています。これからを生き抜く企業の必須課題として、環境経営を捉えている企業は少なくありません。中でもPPAモデルは環境に大きく貢献できる手法として注目を集めています。
※SBT
SBTとは、企業の脱炭素に向けた目標設定のこと。Science Based Targetsの略で、「科学的根拠に基づいた目標」と訳される。
※RE100
電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す企業の加盟連合。日本だけではなく世界中で取り組みが行われており、脱炭素に向けての目標設定や活動内容を毎年報告している。
<参考リンク>
「ESG投資」と企業の「脱炭素経営」|脱炭素ソリューション.com (chikuden-setsuden.com)
⑥資産計上されない
PPAモデルは契約期間中の所有権がPPA事業者にあるため、需要家の資産には計上されません。(自己所有の場合は資産となり、減価償却を行う必要があります)太陽光発電を導入したいけれどバランスシート上の資産を重くしたくないという場合はPPAモデルがおすすめです。
PPAモデルのデメリットや注意点
①長期契約の必要がある/途中解約ができない
PPAモデルは初期費用やランニングコストがかからないというメリットがありますが、PPA事業者はその費用を主に電気料金により賄っています。一般的に10年以上の長期契約が必要な条件となり、その間の設備の移設や解約はできません。もし許可なくそのような対応をしてしまった場合には違約金が発生する場合もありますので注意が必要です。
②設置場所が限られている
PPAモデルはその場所で太陽光発電ができることを前提としていますので、日射量が期待できない場合や塩害や強風被害が懸念される場合にはPPA事業者側が設置を断る場合があります。
また発電設備は重量がありますので屋根の老朽化が進んでいて設置ができない場合もあります。設置できるかどうかの判断はPPA事業者側が下しますが、補強や対策が可能な場合もありますのでまずは問い合わせてみることが大切です。
③電気料金が割高になる可能性がある
PPAモデルは一般的に1kWhあたりの電気料金が固定となりますが、一般電力会社の電気料金は変動するためPPAモデルの契約料金よりも安くなる可能性がないわけではありません。
現在は電気料金が高騰傾向にあるため、相場で見る限りではPPAモデルで得られる太陽光発電由来の電気料金は一般的な電気料金よりも安くなっていますが、今後何らかの理由で一般電気料金が低落した場合、PPAモデルの経済的メリットはなくなります。また、PPAモデルは途中解約ができない点も考慮する必要があります。今後一般電気料金が安くなっていくということは考えにくいですが、経済的なメリット以外にも、非常用電源としての利用や環境貢献価値、地域貢献価値などその他のメリットを複合的に判断することが大切です。
PPA契約の種類
オンサイト電力購入契約(オンサイトPPA)
オンサイトPPAは、自社(需要家)の敷地内に太陽光発電設備や蓄電設備を設置します。例えば施設の屋根、カーポート、遊休地や池の水面などです。オンサイトPPAでは需要家は場所を提供する代わりに太陽光発電の設備提供を無償で受けることができます。PPA事業者と電力契約を結ぶことで太陽光発電で得た電力を利用します。
オフサイト電力購入契約(オフサイトPPA)
オフサイトPPAは土地や場所の提供がない形でのPPAモデルです。PPAモデルを導入したいけれど太陽光発電設備を設置できる場所がない…という場合にも、オフサイトPPAなら導入が可能です。オフサイトPPAではオンサイトPPAよりも電気料金が高くなりますが、設置する土地の用意をPPA事業者が行います。太陽光発電設備も設置する場所の用意もPPA事業者が行うというのがオフサイトPPAの特徴であり、利便性の高いポイントです。オフサイトPPAはさらにフィジカルPPAとバーチャルPPAに分けて考えられます。次の章で詳しく解説します。
自己託送モデル
PPA契約ではありませんが、オフサイトPPAと似たモデルとして自己託送モデルをご説明します。自己託送モデルとは、太陽光発電の設置場所を確保できない企業が再エネ電力を利用したい際に、自己所有で遠隔地に太陽光発電設備を設置する方法です。オフサイトPPAとの違いは、電源の所有者がPPA事業者ではなく自社やグループ会社である点です。送電は一般の電力会社の送配電網を使用します。設備が大規模となり大型の資金調達が必要となりますが、都心部などのような設置場所が限られている一方で追加性のある(既存の設備ではなく世の中に新しい再エネ設備を生み出すことができる)太陽光発電設備を導入したいケースなどには有効なモデルです。
<参考リンク>
今、注目のPPA・自己託送再エネ電力の新しい調達法|脱炭素ソリューション.com (chikuden-setsuden.com)
動画コンテンツ:自己託送による再エネ電力の供給に挑戦セミナー動画|脱炭素ソリューション.com (chikuden-setsuden.com)
フィジカルPPAとバーチャルPPA
オフサイトPPAは太陽光発電設備の設置費用、土地の費用、メンテナンスなどの管理費用も全てPPA事業者が行うことから、一般電力を電力会社から購入するスキームと大きな違いはありません。ただ大きなポイントは、それが太陽光発電など再エネ由来の電力であるという点です。
再エネ由来電力を購入する企業の目的のひとつに環境価値が挙げられます。環境価値とは具体的には非化石証書やグリーン電力証書、Jクレジットなどの、「どれだけ脱炭素に貢献したか」を数値で表した証明書のことですが、これらを手に入れることで、企業は胸を張って環境に貢献したことを示すことができます。
フィジカルPPAとは、これらの環境価値と電力をセットで購入することです。PPA事業者が発電している太陽光発電の電気を直に買取ると同時に、環境価値も手に入れることができます。
バーチャルPPAは仮想電力購入契約とも言いますが、実際の電力の買取をすることなく再生可能エネルギーに含まれる環境価値だけを買い取る方法です。使用する電力は一般の電力会社のままで環境価値だけを買い取ることから、再エネ比率を高めるうえで手近な方法として注目を集めています。
PPA導入に役立つ補助金の一例
民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」は、環境省によるオンサイトPPAなどの自家消費型の太陽光発電設備や蓄電池の導入に対する支援事業です。これにより環境省は太陽光発電設備や蓄電池の価格低減やストレージパリティ(※1)の達成を目指しています。
さらに、ソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)(※2)やため池太陽光など、新たな手法による再エネ導入を促し、地域で再生可能エネルギーを導入する可能性がある人たちをさらに盛り上げていこうとしています。
(※1)ストレージパリティ…太陽光発電設備の導入に際して、蓄電池を導入しないよりも蓄電池を導入したほうが経済的メリットがある状態のこと。
(※2)ソーラーシェアリング…農地に支柱を立てて上部空間に太陽光発電設備を設置し、太陽光を農業生産と発電とで共有する取り組みのこと。営農型太陽光発電ともいう。
<参考リンク>
民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業(環境省)
PPAを活用した太陽光発電システム導入企業様の事例
株式会社ヤマタネ様
株式会社ヤマタネ様は大正13年の創業。食品事業、物流事業、倉庫業、不動産業など大変多岐にわたる業界で大手としてその名を知られている企業です。「続く」をコーポレートメッセージとして掲げられてきた株式会社ヤマタネ様は、2030年までにGHG排出量を2013年度対比で50%以上削減するという大きな目標を掲げられ、その達成に向けた試みの一つとしてPPAモデルによる太陽光発電システムの導入に踏み切られました。今回の導入による効果として、年間509トンのCO2排出量削減が見込まれており、再エネ電源の普及拡大に力強く貢献されています。
OFEの再エネ最大化ソリューション「SolaChiku」(蓄電PPA)のご紹介
太陽光発電で発電した電力に余剰分が発生した場合も、蓄電システムや独自の制御技術を利用して最大限に活用できるのが「SolaChiku(ソラチク)」です。太陽光発電のみの場合と比べて再エネ比率が大幅にアップするので、無駄なく電力を使えます。「SolaChiku(ソラチク)」も初期費用ゼロのPPAスキームでご提供が可能ですので、太陽光発電をご導入される際はぜひご検討ください。
まとめ:PPA導入を検討したほうがいい企業とは
いかがでしたでしょうか。「太陽光発電を導入したいけれど初期費用が高額で決断が難しい…」とお感じになられていた企業にとってPPAモデルは画期的な手法であることがお分かりいただけたかと思います。PPAモデルの中にも種類があり、環境価値を購入するバーチャルPPAから自社の敷地や建物に設置するオンサイトPPAまで、いろいろな選択肢があることもお分かりいただけたかと思います。
環境への貢献度が問われる時代の中で、太陽光発電はコストメリットだけでなくレジリエンス力や環境価値、地域貢献など様々な強みを持っています。ぜひ情報や資料をお取り寄せいただき、太陽光発電のご導入に向けてご検討されてみてはいかがでしょうか。
オムロン フィールドエンジニアリングでも太陽光発電のPPAモデルはもちろん、大型蓄電池を備えた実用的なPPAモデルもご紹介しております。導入企業様の事例も数多くございますので、ご興味がありましたらぜひお気軽にご相談ください。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。