コーポレートPPAとは?
仕組みやメリット・デメリットをわかりやすく解説!
コーポレートPPAをわかりやすく解説!
INDEX
はじめに:コーポレートPPAとは?
そもそもPPAとは?
PPAモデルを簡単にご説明すると、電気を使用する企業(電気の需要家)が太陽光発電設備を設置する「場所」をエネルギーサービス会社(PPA事業者)に提供する代わりに、太陽光発電システムの「無償設置」や「維持管理」を受けられる仕組みのことです。つまり需要家は、初期費用ゼロ円で太陽光発電を設置することができます。再生可能エネルギーを使用したい場合は、発電事業者から直接購入する必要があります。
▼PPAモデルについて詳しくはこちらの記事で解説しています
エネルギーサービス会社(PPA事業者)は太陽光発電設備を設置し、管理・保守を行いながら、発電した電力を有償で提供します。
契約した金額が一般の電力会社の電気料金より安くなった場合は企業側にメリットが生まれます。2050年のカーボンニュートラル実現を目前に今後電気代の高騰が見込まれている中、PPAモデルは高い注目を浴びている太陽光発電の手法です。
コーポレートPPAとは?
コーポレートPPAとは、発電事業者と需要家の間で結ばれる長期電力購入契約のことです。企業は10年~25年という長期にわたり、固定価格で電力を調達することができます。
パリ協定以降、温室効果ガスの削減は世界中で共通の課題として取り組まれてきました。2022年の段階で世界の再生可能エネルギー発電設備の容量は約3600GW程度まで増加し、最も容量の大きい電源となっています。世界ではすでに再生可能エネルギーがメイン電源となっており、太陽光発電や風力発電の発電コストも低減傾向にあります。
もちろん日本国内でも再生可能エネルギーは急速に拡大しており、発電コストも低減傾向にあります。
政府は2022年度の段階で21.7%(2,189億kWh)となっている再生可能エネルギーの電源構成比を2030年には36~38%まで引き上げることを目標としており、今後も再生可能エネルギーは拡大する見込みです。
今後再生可能エネルギーが主たる電源となっていく中、火力発電をメインとする既存電源はフェードアウト傾向にあり、電気代の先行きも不透明です。
企業にとって数十年先までの電力を確保し、コストの予測を立てることは必須の課題とも言える中、コーポレートPPAは長期にわたって電力を確保できる画期的な仕組みと言えます。
<参考リンク>
国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(2024.10)(資源エネルギー庁)
コーポレートPPAの契約形態
コーポレートPPAは大まかに言うとPPA事業者と電気の需要家との間で交わされる電力の長期契約のことです。しかし契約形態はコーポレートPPAの種類によって少しずつ内容が異なります。
この章ではコーポレートPPAの種類と、その契約形態について詳しくご説明していきます。
オンサイトPPA
オンサイトPPAの「オンサイト」とは、「現地」「現場」という意味です。オンサイトPPAでは発電をするPPA事業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を設置して、電気を提供します。
PPA事業者は無償で需要家の敷地内に太陽光発電設備を設置し、保守管理を行います。
仮に太陽光発電だけで電気が足りない場合は電力会社から電気を購入することができます。
一方、太陽光発電で余った電力はPPA事業者の所有となります。
オンサイトPPAのメリットは、一般送電網を介さずに電気を調達できるため災害時の非常用電源としての利用がしやすい点です。電気料金はオフサイトPPAや他の電気料金と比較しても安価になります。(2023年の相場で15~18円)
<参考リンク>
公益財団法人 自然エネルギー財団 インフォパック「コーポレートPPA:日本の最新動向 2024年版」(2024年4月11日)
オフサイトPPA
オフサイトPPAでは太陽光発電設備は需要家の敷地内ではなく、PPA事業者が利用している土地内にあります。オンサイトPPAのように、需要家の敷地内に太陽光発電設備を設置するための十分なスペースがない場合におすすめの契約形態です。
オフサイトPPAでは、PPA事業者の敷地内で発電した電気を一般送電網を介して需要家へと送電します。そのため需要家がたくさんの電気が必要となった場合でも増量しやすい(拡張性がある)というメリットがあります。しかし現地での発電ではないため、非常用電源としては利用しにくく、電気料金もオンサイトPPAと比較すると高めになります。(2023年の相場で高圧:20~23円/特別高圧:16.5~19.5円…いずれも通常の電気料金と比べると低い水準)
<参考リンク>
公益財団法人 自然エネルギー財団 インフォパック「コーポレートPPA:日本の最新動向 2024年版」(2024年4月11日)
オフサイトPPAのバーチャルとフィジカル
オフサイトコーポレートPPAには、物理的な電力の取り扱いに応じて「バーチャルPPA」と「フィジカルPPA」の2つの形態があります。この2つの違いを説明するには「環境価値」の説明をする必要があります。
環境価値とは、再生可能エネルギーが持つ「二酸化炭素を排出しないエネルギーである」という付加価値のことです。再生可能エネルギーは電力としての利用価値とは別に、環境価値があると考えられています。
フィジカルPPAでは、この環境価値が再生可能エネルギーとセットで供給されます。供給される電気そのものが再生可能エネルギーですから、環境価値が付いているわけです。
一方、バーチャルPPAでは環境価値のみを供給します。この環境価値は、実際に使用しているエネルギーが何由来であれCO₂の削減に寄与したことを証明しています。つまり極端に言えば、実際には火力発電由来のエネルギーを使用していても、再生可能エネルギーを使用していると言えるのです。
バーチャルPPAを利用することで、企業は既存のエネルギー供給形態を維持しながら、物理的な拘束を受けることなく環境価値のみを享受することができます。バーチャルPPAの拡大は再生可能エネルギーの需要拡大にも繋がるため、長期的に見れば再生可能エネルギーの拡大にも寄与しています。
リースと自己所有の違い
オンサイトPPAのリースモデルとは、リース事業者が需要家の敷地内に太陽光発電設備を設置し、リース料金を徴収する代わりに、太陽光発電設備の維持管理を行うシステムです。オンサイトPPA(自己所有型)との違いは、設備がリース(賃貸)である点と発電した電力がすべて需要家の物になる点です。太陽光発電で余った電力は電力会社へ売電することが可能となります。(太陽光発電で足りない電力を電力会社から購入できる点は自己所有型のオンサイトPPAと同じです。)
コーポレートPPAのメリット
初期費用ゼロ・管理費用ゼロで太陽光発電(再エネ)を設置・維持できる
PPAモデルの最大のメリットは、初期費用ゼロ・管理費用ゼロで太陽光発電を設置・維持できることです。発電した電力の使用契約は別途となりますが、太陽光発電を導入したい企業の中でハードルとなることが多いのは初期費用(イニシャルコスト)です。PPAモデルではその心配はなく、さらにメンテナンスコスト(ランニングコスト)もPPA事業者が負担するため、太陽光発電を設置するにあたって必要なコストはほとんどありません。(設置する土地の固定資産税などは需要家負担となります。)
脱炭素経営ができることにより、企業イメージのアップにつながる
太陽光発電は二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーです。企業は太陽光発電を利用することで、脱炭素経営の大きな一歩を踏み出すことができます。
カーボンニュートラルを世界中の企業や政府が推し進めているなかで、脱炭素経営は避けては通れない重要な企業活動とみなされつつあります。(参照:後述の「CDP・SBT・RE100など環境経営に貢献」の章)脱炭素経営は株主や金融機関へのアピールだけでなく、企業イメージのアップにもつながります。
電気代を削減できる可能性がある
前述の通り、PPAモデルは太陽光発電を費用ゼロ・ランニングコストゼロで設置できる画期的な方法です。そこで発電された電気については別途契約となりますが、長期間固定価格で契約することが可能です。ここに大きなメリットがあります。
企業経営の中でも、工場を所有されている場合は特に電気を使用します。照明電気代、空調電気代、生産設備電気代、事務機器用品などの電気代…電気なしには事業が成り立たない企業も多くいらっしゃることでしょう。
オンサイトPPAで供給される電気代は、送電網を介さない分、一般の電気料金より割安です。
どのくらい節約できるかは契約内容や使用方法によってケースバイケースではありますが、工場などの大きな施設では年間で数百万円の削減となることも珍しくありません。
削減効果を具体的にお調べになりたい場合は、ぜひ弊社までお問い合わせください。
非常用電源(BCP対策)として使える
日本は災害の多い国ですので、非常時への備えは大切です。特に工場など電気を必要とする事業所では、一般電力会社からの電力供給が停止してしまうと操業ができません。
そんなとき、オンサイトPPAなど自社の敷地内の太陽光発電設備が稼働すれば電力を使用できる可能性があります(契約内容によります)。非常用電源が使用できれば地域にも安心を与えることができますし、病院や老人ホームなど命を預かる場所でも一般電源の復旧を待つことなく営業を続けることが可能です。
CDP・SBT・RE100など環境経営に貢献
世界的な気候変動対策の指標として投資家たちから注目を集める指標となっているのが、CDP・SBT・RE100といったイニシアチブと呼ばれるものです。
イニシアチブとは直訳すると「主導権」や「実行力」を指しますが、分かりやすく言うと、気候変動問題に対して積極的に対策を立て、実行している企業や団体であるという指標のことです。
CDPは「カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト」と呼ばれ、企業や自治体が環境に与える影響をまとめ、情報を開示している非営利団体です。CDPは投資家たちに代わって企業に環境活動に関する質問書を送ります。企業が回答を返すとその内容についてまとめ、AからFまでのスコア評価を行い結果を開示しています。ESG投資を行う投資家には特に参考にされている指標で、企業に与えている影響も年々大きくなっています。
SBTはパリ協定で求められている温室効果ガスの削減基準に対して、合理性のある目標設定をした企業が加盟するイニシアチブです。SBTとは「Science Based Targets」の頭文字であり、直訳すると「科学的な根拠に基づいた目標」となります。この名の通り、企業はSBTに対して温室効果ガスの排出量削減への取り組みと目標を申請書として提出します。SBTがその妥当性を審査し、認定された場合、排出量と対策の進捗状況の報告と開示が義務付けられています。
RE100は企業が使う電力の100%を再生可能エネルギーで賄うことを目指す、国際的なイニシアチブです。「Renewable Energy 100%」は直訳すると「再生可能エネルギー100%」であり、非常にわかりやすいイニシアチブとなっています。こちらも、2050年までに再エネ調達率100%を達成する具体的な目標を提示することが加盟条件となっています。
RE100が特に重視しているのは自然エネルギーの「追加性」です。追加性とは、新規に自然エネルギーの発電設備を追加して、火力発電や原子力発電の代わりとすることです。
どういうことかというと、仮に企業が既設の発電設備の電力や証書を購入しても、日本全体、世界全体として見た時のCO₂排出量は減りません。そのため現実にCO₂排出量を減らすためには、追加性のある電力や証書を購入することが望ましいとされていて、RE100も「追加性」を特に重視する傾向にあります。
これらのイニシアチブの内容を見てもわかる通り、加盟するためには厳しい目標設定と進捗状況、達成率を開示する必要があります。特にCDPはSBTやRE100に加盟していない企業へも送られる点がポイントです。CDPの質問書に対して企業からの回答がないとFランクが付けられます。これは環境貢献レベルが低いことを反映したものではないとされていますが、「無回答」または「回答を拒否」したことの証明となるため、投資家からの印象が悪くなってしまいます。
資産計上されない
PPAモデルの財務的な特徴として挙げられるのが、資産計上されない点です。PPAモデルでは土地を提供する代わりに、太陽光発電システムそのものはPPA事業者の所有物となっています。そのため基本的に資産計上されません。(最終的には監査法人などの判断によります)
契約期間満了後は太陽光発電設備の所有権がPPA事業者から需要家へ譲渡されるケースが多いです。満了後のメンテナンスは需要家側が行わなければなりません。
コーポレートPPAのデメリット
長期契約が必要
PPAモデルは基本的に10~25年の長期契約です。また、契約期間中は太陽光発電設備はPPA事業者の所有物となるため、仮に太陽光パネルを移設したい、撤去したいとなってもできないか、する場合は違約金を支払う必要が出てきます。いずれの場合もPPA事業者へ相談が必要です。
また仮に太陽光発電で発電した電気料金が一般の電気料金より高くなった場合でも契約を解除することはできません。一般電気料金が高騰する傾向にはありますが、長期契約である分、不測のリスクに対する覚悟は必要です。
太陽光発電が設置できない場合もある
オンサイトPPAの場合、十分な発電量が見込めない場合や安全に設置ができない場合などはPPA事業者が設置を断念する場合があります。そのような場合は仮に希望しても太陽光発電設備を設置することはできません。このような場合、オフサイトPPAであれば(現地設置ではないため)利用可能となる場合があります。
廃棄費用がかかる
PPAモデルは契約期間満了後は需要家へ所有権が譲渡されるため、満了後のメンテナンスコストは基本的に自己負担となります。また、廃棄費用についても負担する必要があります。
これについては、廃棄費用の積み立てなど、先を見通した準備を行っておくことが大切です。
コーポレートPPAについての補助金
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
この補助金はオンサイトPPAモデルを活用した太陽光発電設備や蓄電池の導入支援をするものです。政府はこの支援を通じて、地域の脱炭素化と防災性の向上を目指しています。
この補助金では、業務用施設・産業用施設・集合住宅・戸建住宅への自家消費型の太陽光発電設備・蓄電池(車載型蓄電池を含む)導入に対して補助金が支給されます。
▼詳しい解説はこちらの「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」でどうぞ
<参考リンク>
環境省:PPA活用等による地域の再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業
環境省:民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業のうちストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業の公募開始 | 報道発表資料 | 環境省 (env.go.jp)
需要家主導太陽光発電導入促進事業
「需要家主導太陽光発電導入促進事業」は、需要家が、太陽光発電設備や蓄電池を導入し、長期間使用するための支援を行うものです。
▼詳しい解説はこちらの「需要家主導太陽光発電導入促進事業」でどうぞ
<参考リンク>
資源エネルギー庁:需要家主導太陽光発電導入促進事業
オムロン フィールドエンジニアリングがご提案する
PPA型再エネ最大化ソリューションSolaChiku(ソラチク)
オムロン フィールドエンジニアリングではPPAを利用した初期投資ゼロの太陽光発電をご提案しております。蓄電池とEMS(エネルギーマネジメントシステム)を利用することで、太陽光発電で発電した再エネを無駄なく使用します。再エネ比率が大幅にアップし、電気料金の削減や災害時のBCP対策にもご活用いただけます。
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まとめ:PPAで早期に太陽光発電の活用を
いかがでしたでしょうか。世界中が温室効果ガス削減に向かって様々な対策をしている中で、日本政府や日本国内の企業も脱炭素化へ向けて具体的な目標を立て、達成へ向けて着実に実行をしていくことで様々なメリットがあることがお分かりいただけたかと思います。
太陽光発電は特に、今後政府がメイン電源化を目標としている重要な施策です。
PPAモデルなど、イニシャルコストが低い施策を柔軟に利用しながら、ぜひ太陽光発電や蓄電池の導入を進めて頂きたいと思います。
気になる点、疑問点などがございましたら、弊社へいつでもお気軽にお問い合わせください。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。