出力制御とは?
太陽光発電における出力制御の必要性や今後増加する理由について徹底解説!
太陽光発電における「出力制御」とは?
INDEX
太陽光発電の出力制御とは?概要と仕組み
太陽光発電設備において、「出力制御」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか。出力制御とは、国内で広く使用されている電力の「需要」と「供給」のバランスを取る目的で、国が定めたルールに基づいて電力会社が発電量を制御することを指します。なぜバランスをとらなければならないかというと、電気は発電量と消費量を常に同程度にする必要があり、どちらか一方が強すぎてバランスが崩れてしまうと、大規模停電につながる恐れがあるからです。
今回はこの「出力制御」について、語句の意味や仕組みを解説するとともに、メリットやデメリット、導入された背景などをわかりやすくご説明して参ります。
出力制御をする理由・目的
電力の需給バランスを保つ
電気は、使う量と発電する量が常に一致している必要があります。このバランスが崩れると周波数(東日本は50Hz、西日本は60Hz)を一定に保てなくなり、最悪の場合は大規模停電につながります。そこで電力バランスを保つために、主に発電量が増えすぎた場合に発電量を制御するのが「出力制御」です。
送電線の容量を超えないようにする
需給バランスの他に、送電線の上限容量を超えて電力が流れてしまうおそれがある場合にも出力制御が行われることがあります。
出力制御の仕組み…「優先給電ルール」
出力制御が行われる際には、国が定めたルールに基づいて「優先給電ルール」が定められています。「優先給電ルール」というのは、余剰電力が発生したときに、どの電源を優先するか(どの電源から制御していくか)を決めたルールです。
というのも、電源には原子力発電や火力発電、太陽光発電などいろいろな種類があり、電源の性質によっては、一度制御するとすぐに元に戻せない電力があります。(水力・原子力・地熱など「長期固定電源」と呼ばれるもの)。太陽光発電などは比較的制御がしやすいですが、天候の良い時には発電量が多く、天候の悪い時には発電量が少ないといったように、発電量そのものが自然の力にゆだねられているという性質があります。そのためコントロールのしやすさや出力量などいろいろな観点が考慮されたうえで、出力制御をする順番が決められているのです。
政府や電力会社は、様々な電源がある中で、それらを上手に組み合わせて電力の安定供給を図っています。出力制御の「優先給電ルール」はそのための大切なルールでもあります。
出力制御の方法
出力制御の具体的な仕組みとしては、主に2つの方法と、それに付随する代理の制御方法があります。
オフライン制御
電力会社からのメールや電話連絡を受けて、発電事業者側が現地に赴き、アナログで停止操作・復旧操作を行う制御方法です。この方法は、そもそもオンライン制御のための出力制御用機器がない時代から太陽光発電を導入していた事業者が採用している方法でもあります。
オンライン制御
オンライン制御はオフライン操作で行っていた停止・復旧操作をオンライン(自動制御)で行うシステムです。オンライン制御は係員が現地に赴く必要がなく、電力会社からの指示をもとに自動で制御されるため効率的な運用ができます。
オンライン代理制御
オフライン制御は出力制御の際に手動で停止・復旧操作を行う制御方法ですが、小規模発電所など全ての発電所がそうした対応を行うのは現実的ではありません。そこで、オンライン発電所がオフライン発電所の代理で制御を行うのが「オンライン代理制御」です。オンライン事業者は代理制御を行うことで、オフライン事業者から対価を受け取ります。
出力制御の旧ルール・新ルールとは?
出力制御を行っていく方法として、オンライン制御・オフライン制御があることはお分かりいただけたかと思いますが、そもそも太陽光発電普及初期のころはオンライン制御ができる機器が整っておらず、オフライン制御を選択せざるを得ない事業者もいました。
特に、発電出力が500kW未満のオフライン太陽光発電事業者は制御が大変非効率で、当面の間は出力制御の対象外とされていました。しかし、
・政府が今後さらに太陽光発電設備の普及拡大を促進していく姿勢であること
・太陽光発電事業者の公平性も確保するべきとの考え方
から、2022年12月以降は500kW未満のオフライン太陽光発電所に対しても出力制御を行っていくこととしました。これが出力制御の「新ルール」です。
新ルールが適用されることで、これまで一部の事業者に偏っていた出力制御をより多くの事業者で負担していく形となり、全体で見た時に出力制御を行う各事業者の負担は軽くなります。このようにルールは社会課題とともに変わっていくものなので、制度や政府の方針などを注視し情報収集していくことが必要です。
出力制御が行われるようになった主な原因は?
再エネ導入量の増加
再エネは大変クリーンでこれからも普及していく可能性の高い電源ですが、自然エネルギーを由来としているため、人間の思い通りに発電量を調整しにくいという特徴があります。
特に電力需要が低い時期には発電量過多になる恐れもあるため、出力制御が行われるようになりました。
電気代高騰や節電意識の高まりによる電力余剰
近年では電気代が高騰傾向にあることや地球環境の保護意識から、企業や一般の人々の節電意識が高まりつつあります。人々が電気を節約することで電力需要が低くなったことも出力制御の一因となっています。
以上、出力制御の原因について2点記載しましたが、出力制御そのものは電力の安定供給に必要であって決して悪いことではありません。2050年のカーボンニュートラルに向けて、日本政府は今後も太陽光発電を増やしていく方針です。また、東日本大震災、SDGsなどをきっかけとして企業のレジリエンス強化、脱炭素経営への意欲が高まり、太陽光発電は実際に増加の一途をたどっています。
再エネ導入と、電力の安定供給。この2つを同時に進めていくために出力制御が必要とされているのです。
出力制御のメリットとデメリット
出力制御のメリットとデメリットを簡単にまとめると以下になります。
●出力制御のメリット…電力の安定供給が可能となる
●出力制御のデメリット…太陽光発電などで発電した電気(発電可能な電気)が無駄になってしまう
出力制御のメリット
出力制御をすることで電力の安定供給が可能となり、大規模停電のリスクを減らすことができます。メリットと言うよりは必要な措置といったほうが適切かもしれません。
大規模停電にひとたび陥ると、鉄道、交通、物流、といった交通網をはじめ、学校、病院や介護施設など命を守る施設も機能停止に追い込まれます。電子機器も使用できず、連絡も遮断されます。建物の中では自動ドアやエレベーターが停止し、パニックが起こる可能性もあります。
このような事態を防ぐために、電力の供給状況は常に監視され、必要に応じて出力制御が行われているのです。
出力制御のデメリット(問題点)
前章でも述べましたが、出力制御は太陽光発電などで発電した電気を無駄にしてしまう、という大きな問題点を抱えています。カーボンニュートラルに向け政府や企業、国民が一丸となって再生可能エネルギーの創出に向けて動いているときに、せっかく作った電気を捨ててしまうような動きがあるのは決して好ましいことではありません。
ただこれまでもお伝えしてきた通り、出力制御は電力の安定供給には必要な措置であり、特に既存エネルギーから再生可能エネルギーへの転換期においては避けて通れない道です。
政府はこれらの問題を解決するべく、対策を急加速させています。例えば容量市場の開設や、調整力確保に向けた蓄電所の新設などです。企業や家庭でも、再エネを蓄電池でフル活用する動きが広がっています。
そこで様々な技術を活用し、再生可能エネルギーの無駄を省くべく開発されたのがオムロン フィールドエンジニアリングの提供する「SolaChiku」です。
再エネ最大化ソリューション「SolaChiku」
「SolaChiku」は初期費用ゼロで太陽光発電システムを導入できるPPAモデルであるとともに、蓄電池を用いることで余った電力もしっかりと使い切る「再エネ最大化ソリューション」です。不要なエネルギーを監視・制御するEMSシステムを搭載しているので、効率的な節電と再エネの最大限活用を同時に実現します。
太陽光発電のみで発電をした場合と比較すると、SolaChikuは効率よく再エネを活用することができます。詳しくは下記のリンクをクリックしてご覧ください。
再エネ最大化ソリューション<SolaChiku>|オムロン フィールドエンジニアリング株式会社 (chikuden-setsuden.com)
このようなソリューションを通して、私達は事業者様をサポートしていきます。
気になる点がございましたらぜひお気軽にご相談ください。
次の章では、具体的な出力制御の問題点、今後出力制御が増えていくのかどうか、出力制御を抑えるための取り組みがあるのかどうかを解説していきます。
出力制御量は増えている?
出力制御量の増加推移
出力制御は2018年に初めて九州エリアで行われました。その後、2022年には中国・四国・北海道・東北エリアで、2023年には関西・中部・北陸で実施され、全国8エリアまで拡大されました。これまで東京エリアは出力制御が行われたことがありませんが、資源エネルギー庁も「出力制御の実施は時間の問題」と述べており、出力制御エリアは徐々に拡大していると言えます。
また、全国の出力制御量についても2018年度は約1億kWh(九州のみ)だったのに対し、2022年度は全国で約6億kWhと増加傾向にあります。季節別に見ると、需要が低下する春に集中しており、2022年度の出力制御量約6億kWhのうち、8割以上が3月〜5月に生じています。
出力制御量約6億kWhがどれくらいの電力に相当するかを金額で換算してみましょう。1kWhあたりを7円と低めに見ても、約6億kWhはおおよそ42億円の電力を無駄にしていることになります。こうして価格に置き換えてみると、出力制御がいかに貴重な電力を捨ててしまっているかをお分かりいただけるかと思います。
<参考リンク>
再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けて(経済産業省・資源エネルギー庁)
再エネ導入量の増加推移
出力制御の背景には再エネ導入量の増加がありますが、実際に再エネ導入量の推移を見てみると日本国内の太陽光発電割合は電源構成比率で2011年度0.4%から2020年度7.9%に増加しています。再エネ全体では、2011年度10.4%から2020年度19.8%と飛躍的に拡大。今後も政府は再生可能エネルギーを積極的に導入していく方針で、2030年度の野心的目標として、電源構成36-38%の導入を目指しています。
再エネ導入量が増えていく過程において出力制御はある程度必要なものですが、前章でも触れた再生可能エネルギーの廃棄問題を解決しない限り、この電源構成目標の達成は難しいとも言われています。出力制御の低減は、今後の日本のカーボンニュートラル達成に関して大きなカギを握っていると言えます。
<参考リンク>
国内外の再生可能エネルギーの現状と今年度の調達価格等算定委員会の論点案(資源エネルギー庁)
出力制御量が想定以上に増加することはあるの?その理由は?
政府にとって再エネ導入の増加は好ましい結果である半面、出力制御が増加すれば再エネ普及の足かせともなってしまいかねません。この章では、出力制御が増えるケースのポイントをご説明します。
一般的に、エリア内で発電量が需要量を上回る場合は、電力会社は次のような措置をとります。
①火力発電の出力を抑える
②揚水発電(※)のくみ上げ運転によって電気を一時的に使う
③地域間連系線を活用して他エリアへ送電を行う
このうち、①と②までは想定内で運用が可能ですが、限度があります。そして③に関してはエリア外の需給事情も伴います。そしてこれらを行ってもなお電力が余っている場合に、バイオマス発電や太陽光発電への出力制御が行われる可能性が高くなります。
※揚水発電…山の上部にダム、下部に貯水池を作り、電気の需要が少ない時に他の電源で発電した電気を使用して水をくみ上げておき、電気の需要が多い時に水を落として発電する方法。
水の位置エネルギーを利用した、巨大な蓄電池のような仕組み。
エリア外地域への送電量が予定より減少した
大手電力系統にはエリア内供給のための送電線がありますが、各エリア同士をつなぐ連系線と呼ばれる送電網があり、これを地域間送電網と呼びます。この送電網は災害や事故が起きた時などに電力を融通できるような仕組みです。
あるエリア内で電力の供給量が需要量を上回りそうなとき、地域間連系線を利用して他エリアへ送電を行うことができます。ですが、送り先のエリアでも供給が過剰になるなどして見込んでいた送電量が確保できないときは出力制御が行われる可能性が出てきます。
晴天日の増加により太陽光発電などの発電量が想定より多かった
出力制御が行われる理由は、電力が使われなさ過ぎたか、電力が作られ過ぎたかの2つです。この2つが同時に起こり得るのが春秋の太陽光発電の晴天日です。
特にゴールデンウイークやシルバーウィーク頃のクーラーが必要なく過ごしやすい季節で、企業が長期休暇を取るようなときは電力の需要が極端に落ちます。なおかつ晴天が続けば太陽光発電の発電量が増え、電力の供給が需要を上回ることになります。このような時には出力制御が行われる可能性が高くなります。
今後も出力制御は拡大していく?見通しを解説!
出力制御は電力の安定供給のためには必要不可欠なものです。ですが一方で、太陽光発電の普及には逆行する仕組みであると危惧する声もあります。今後も出力制御はやむを得ず拡大していく見通しなのでしょうか。この章ではその点について解説していきます。
政府による継続的な再エネ導入支援により、短期的には拡大の見通し
2050年のカーボンニュートラルに向け日本政府は太陽光発電の導入を意欲的に進めており、現状は大手電力会社の持つ火力発電・原子力発電などの主力電源から、各企業や電力事業者が運営する再エネ電源の利用が増えるエネルギーミックス期にあたります。このような時期には出力制御はつきものであり、短期的には拡大する見通しです。
政府による出力制御を抑えるための取り組みによって、長期的には縮小する
太陽光発電の普及過程で出力制御が必要なことは確かです。しかし、出力制御が増えてしまうことでせっかくつくった再エネ電力が無駄になってしまっては意味がありません。
そのような観点から、政府は出力制御を極力行わないという方針で、さまざまな対策を考えています。以下は具体的な対策の例です。
【短期対策】
1.発電設備のオンライン化の推進
2.火力発電の最低出力の引き下げ
3.揚水発電の最大限活用
4.蓄電池や水電解装置、ヒートポンプによる需要創出
5.関門連系線(※)の再エネ送電量の拡大
※関門連系線…関門海峡を横断し、九州の電力系統と中国地方の電力系統を結ぶ送電線のこと
【中長期対策】
1.地域間連系線の増強
2.変動再エネ(風力・太陽光)の調整力としての活用
3.価格メカニズムを通じた供給・需要の調整・誘導
<参考リンク>
出典:再生可能エネルギーの出力制御の抑制に向けて(資源エネルギー庁)
このような幅広い取り組みを通して、政府は出力制御を減らしていく姿勢を見せています。もちろんそれは電力の安定供給が大前提ではありますが、このような取り組みを通して、中長期的には出力制御は減少していく見通しです。特に短期対策の「4.蓄電池や水電解装置、ヒートポンプによる需要創出」は、政府の支援もあり、企業も取り入れやすい対策ですので、次章で詳しく解説します。
出力制御の抑制のほかにも、政府は太陽光発電の普及に向けて様々な支援を打ち出しています。
具体的な支援や補助金については以下のページにまとめましたのでぜひご覧ください。
出力制御を抑えるための具体的な施策
政府は電力の安定供給を第一の柱としながら、出力制御を極限まで少なくするため様々な施策をおこなっています。(前章参考)その中で企業経営の参考にもなる注目の施策を1つご紹介したいと思います。
蓄電池の増設支援
出力制御など発電した電力をある程度外部からコントロールされるような状況下においては、太陽光発電システムと蓄電池をセットで導入するような仕組みが必要です。そのためには太陽光発電や蓄電池の導入費用負担を軽くする必要があります。そこで導入されたのがPPAモデルですが、オムロン フィールドエンジニアリングでは、蓄電池とセットになったPPAモデルをご用意しております。それが「SolaChiku」です。SolaChikuは初期投資ゼロで太陽光発電や蓄電池を導入することができる画期的なモデルです。契約期間中はランニングコストや修理の負担もゼロ。クリーンでレジリエンス力も高い再生可能エネルギーの活用を最短距離で行っていただけます。
また、SolaChikuには太陽光発電と蓄電池だけでなく、発電した電力を無駄なく最適にコントロールしてご使用いただけるEMSシステムも搭載。発電量予測に基づく需給予測やピークシフトなどの効率的な運用で、再エネ電力を最大活用していただけます。
まとめ:出力制御を理解したうえで太陽光発電の導入を
いかがでしたでしょうか。出力制御の仕組みと必要性を理解していただいた上で、今後も政府が主体となって太陽光発電をはじめとした再エネ導入を意欲的に進めていく姿勢であること、また出力制御の問題も解決へ向けて積極的に進んでいく姿勢であることがお分かりいただけたかと思います。カーボンニュートラルを達成するためには、出力制御をゼロにはできなくとも極力減らしていく努力と、再エネ電力を効率的に運用していく姿勢が大切です。
再エネ電力活用の最大化を検討されている場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
【執筆者情報】
脱炭素ソリューション.com 編集部
脱炭素ソリューション.comが運営する「エネタメ」は、オムロン フィールドエンジニアリング株式会社のエネルギーマネジメントに関する豊富な実績とノウハウを活かした専門的な情報や、再生可能エネルギー、蓄電池、災害対策、省エネソリューション、補助金などのコンテンツを中心に、脱炭素化/カーボン・ニュートラルの取り組みに役立つ情報を発信しています。